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STEP2 原因調査[POSTED]:2018-07-31
(1)調査チームの編成
調査チームとしては、主に社内従業員で構成される社内調査チームと、外部の専門家のみで構成される第三者委員会の何れかを選択することになりますが、社内調査チームを必ず選択しなければならない義務や、第三者委員会を必ず選択しなければならない義務が法的に存在するわけではありません。
いずれを選択するかは、不祥事の規模・内容・ステークホルダーや世間の関心度などを総合的に考慮し、経営者が判断することになります。
ア 社内調査チームの編成
社内調査チームは、通常、総務部、法務部、コンプライアンス部、人事部など従業員に関する不祥事に対処することが予定されている部署を中心に構成されます。調査費用の支払など経理業務がかかわる場合は経理関係者に入ってもらうこともあります。その他、調査を円滑に進めるために、以下の人物の参加も検討します。
① 内情に詳しい人物をチームに入れる
企業によっては部門ごとに取引慣習や日常業務が異なることが多く、不祥事等の舞台となった部門・部署の内情に詳しい人が調査チームに入っていないと、調査方法を間違えたり、調査がスムーズに進まなかったりすることがありますので、必要に応じて内情に詳しい人物に入ってもらうことも検討します。
ただ、内情に詳しい人物の人選にあたっては、不正行為に関与していないことを確認するなど細心の注意が必要となります。
② 外部専門家の利用
不正行為の内容によっては、外部の専門家を加えることを検討します。専門的な知識やノウハウを持つ弁護士や公認会計士などに入ってもらうことで、調査を行いながら同時にリーガルチェック等を受けることができるため調査がスムーズに進むことが期待できます。また、不正行為の温床ともなった企業風土の分析や社員へのヒアリングの場面などで客観的視点からの調査も期待できます。
イ 第三者委員会の利用
ステークホルダーや世間が関心を示すような不祥事等の場合、不正調査の信頼性を高め、ひいては企業の信頼回復を図るために、調査チームとして、第三者委員会を選択することがあります。
外部専門家を構成員とする第三者委員会が調査を実施することにより、調査の独立性、中立性をアピールすることができます。また、調査結果に対する信頼性を高め、ステークホルダーや社会に対し説明責任を果たすことができます。
第三者委員会は、3名以上を原則とし、一般的に弁護士に依頼することが多く、不祥事の内容によっては、公認会計士や学者その他有識者を入れることもあります。
委員の人選については、独立性・中立性を確保するために、企業と利害関係を有しない者を選択することになります。例えば、顧問弁護士や継続的に業務を受任している弁護士は控えるべきでしょう。
なお、日本弁護士連合会が2010年7月15日に公表した「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」によれば、企業と利害関係を有する者は第三者委員会の委員に就任できないとされています。
(2)調査実施
原因調査は、不祥事等の事実認定のための資料、不正行為者を特定するための資料、不正行為者の責任を示す資料、調査対象者の財産関係や身分関係を調査するための公的資料(不動産登記簿謄本など)などを収集し、不正行為者や関係者に対しヒアリングを実施することにより、不祥事等が発生した事実、不祥事等が発生した原因など不祥事等の全貌を明らかにし、その後どのような再発防止策を策定すべきか明確にします。
調査実施のポイント |
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ア 不正行為者個人の所有物まで調べることができるのか?
不祥事等には、企業が貸与したパソコン、電子メール、携帯電話が使われることは勿論ですが、その他、個人のパソコン、電子メール、携帯電話、手帳、ノート、銀行口座などが使用されることもあります。
調査チームとしては、不祥事等の重要な証拠となることから、個人の所有物を含めすべてを調査したいところではありますが、調査チームには警察のような強制捜査の権限がありませんので、企業の所有物ではないものや個人のプライバシーにかかわる情報が含まれるものを強制的に取得できないことがあります。
そのため、調査チームとして、どこまで強制的に取得し調査できるかについては、その物品ごとに弁護士に相談のうえ判断せざるを得ません。
イ 調査の時間短縮
不祥事等の規模や内容によっては、調査資料が膨大となり、また、ヒアリング対象者も多数に上ることがあります。調査期間に限りがある中で、調査自体に時間をかけてしまうと、その後の対応に支障が生じます。
ウ 調査の二度手間を防止
原因調査後に、不正行為者への損害賠償請求や刑事告訴を予定している場合は、二度手間を防ぐために、刑事手続きや裁判での利用も前提とした調査を行う必要があります。
(3)調査報告
企業は、調査結果を踏まえ、不祥事等に関与した役員・従業員に対し処分を行い、再発防止策を実施し、また、関与者や社外の不正行為者に対し、損害賠償請求などの民事上の責任追及や、告訴告発等の刑事上の責任追及を行うことになります。企業への調査報告のために作成される調査報告書は、これらアクションの前提となるものとして非常に重要なものとなります。なお、調査報告書では、不祥事等の原因を踏まえた再発防止策の提言まで行うことが一般的です。
調査報告のポイント |
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ア 事実認定では慎重な対応を
調査報告書は不祥事等をめぐるその後の裁判で、証拠として使用されることが多く、仮に、報告書内で企業側の重大な帰責性が認められれば、その認定を裁判で覆すことは難しく、裁判結果に多大な影響を及ぼします。
その意味で、十分な裏付けなく安易に問題事実の存在を認定するようなことがあってはなりません。
一方で、問題事実やその証拠が明らかに存在するにもかかわらず、この期に及んでもこれを隠匿し、会社の帰責性は全くないと認定すると、内部通報や内部の情報提供者による外部への情報流出によりその隠蔽が明らかになり、企業の隠蔽体質を更に追及されることになって、事業の継続が困難となるような大損害を被る可能性もあります。事実認定では慎重な対応が求められますので、社内調査チームを編成される際には、弁護士に相談して進めるべきです。
イ 調査報告書のリーガルチェック・検証
社内調査チームにて調査報告を行う場合、必ず弁護士に法的に問題ないかチェックを依頼し、また、可能であれば第三者委員会にその検証を依頼します。
調査報告書は、報告後の損害賠償請求訴訟等で証拠として使用される可能性が非常に高いものです。そのため、調査結果が本来社内調査チームの意図した内容となっているのか、誤解を招く表現や曖昧な表現が使用されていないかなど、報告前に事前にチェックしてもらうことが肝要です。
また、社内調査チームの調査結果については、世間やマスメディア等の目からすると、どうしても保身的・萎縮的になりがちであり、仮に十分な調査を実施し、その結果が全て報告されていたとしても、企業に不利な事実を隠蔽したのではないか、調査結果が経営陣に有利にゆがめられているのではないかなどの憶測や不信感が払拭できないことがあります。
そのため、調査結果について、公表前に第三者委員会という外部の目から事後検証させることで、調査結果の信頼性を確保することも考えられます。
ウ 調査報告書内で実名記載は?
不祥事等に関与した役員・従業員の実名を調査報告書に記載するかどうかは判断が分かれるところです。
これまで公表された調査報告書には、実名が記載されているものもあれば、匿名になっているものもあります。また、関係する取引先等の企業名も、匿名とする場合もあります。実名・匿名のいずれを選択するかの問題は、企業のステークホルダーに対する説明責任と、報告書による実名公表がその実名の者に対する名誉棄損となるリスクを、双方考慮し、慎重に判断する必要があります。
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