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通称名の人物を相手に裁判を訴えるときには注意[POSTED]:2021-08-13

芸能人のように通称名を使用している人物、外国人で日本において通用名を使用している人物、事情があって意図的に通称名を使用している人物などを被告として裁判で訴えるときの、気を付けなければならないことを解説します。
実は、通称名などの本名ではない名前でも裁判で訴えることが、理論上は可能で、通称名で訴状を作成し、そのまま判決が出てしまうことがあります。
本来であれば訴訟提起の段階で住民票や戸籍を確認し、被告の氏名住所を作業があってしかるべきですが、弁護士がついていてもその確認作業を行われないことがあります。
住民票を確認する場合も、必ずしも住民票の住所と現住所とが一致するものではないため、被告とされるものに訴状が送達されてしまえば、訴訟はスタートします。裁判においても、住民票や戸籍などの公的な証明書による身分照合は行われず、氏名住所が間違っていてもそのまま裁判は進み、最終的に原告が裁判に勝訴することもあります。裁判というと、公的なIDとの照合が必須であるとの誤解があるようですが、そうではないのです。

例えばある人物が、本名は『山田太郎』で、普段の生活では『山田次郎』という通称名を使っていたとします。この人物にお金を貸したAさんが『山田次郎」と訴状に書いて、『山田次郎』こと『山田太郎』(以下「山田」)を相手に裁判を提起します。その時、Aさんは『山田太郎』という本名を知りませんでした。

 

また、山田は住民票の住所変更をしておらず、現住所と住民票の住所は異なっていたが、Aさんは山田の住所を把握していたため、住民票を確認しなくとも訴状は山田に送達がされました。この時、住民票を取得して確認作業をすれば、山田が「山田次郎」という通称名を使用していることや、住民票と現住所のずれに気づくことができたはずです。
そのまま裁判は進み、Aさんが勝訴し、山田は控訴せずにAさん勝訴の裁判が確定します。

 

この後に山田がなかなか支払わないので、Aさんは山田の財産に執行をすることになりますが、ここで問題が生じます。

財産に強制執行できる書面を債務名義といいますが、判決も債務名義になります。判決には『山田次郎』が当事者として書いてあるのですが、住民票や戸籍などの公的記録からは『山田次郎』なる人物が存在していることが確認できません。

執行にあたっては住民票の添付が求められ、一致していることをもって執行をすることになります。しかし、債務名義と住民票の名前が一致していない。つまり、債務名義に書かれた『山田次郎』と住民票に書かれた『山田太郎』が同一人物であることを証明できないのです。訴状や判決に書かれている山田の住所は、住民票に記載がないのですから、当然ですね。
かくして、「山田次郎」に対してせっかく取得した勝訴判決も執行はできなくなります。

ではもう1回、本名である「山田太郎」に対して、同じ裁判をやり直せばよいのではないかということになります。しかし、それもできません。山田という1人の同じ人物に対して、すでに判決が効力(既判力)を生じた状態になっているからです。
そうなると、判決の補正という手続き(判決に記載ミスがあったとして修正すること)を行わなければならなくなるのですが、「山田太郎」と「山田次郎」が同じ人物であることを明らかにする作業や負担が生じますし、判決言い渡しから時間が経っていると裁判所が記録を廃棄していることもあり、補正が難しくなります。
通称名の人物を被告として訴える訴訟のパターンの1つに、詐欺師に対する損害賠償請求や貸金返還請求があります。詐欺師は一般的に、執行妨害を目的に通称名を常用しているので注意が必要です。
訴訟提起にあたっての住民票での確認は、愚直にも思える作業ですが、重要なことなのです。

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