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実名で報じるか否かのメルクマール[POSTED]:2018-07-20
実名で報じるか否かは、実名に基づく十分な取材をし、その中で得られた事実関係を踏まえたうえで、報道機関が自主的に決めるとされています。
メルクマールとしては、
- ①関係者の社会的地位・立場
- ②事件・事故の重大性
- ③書かれる側の被る不利益
などを考慮して判断されています。
(1)関係者の社会的地位・立場
公人・公的存在については報道されやすい傾向にあります。
①政治家・候補者
政治家の公人性に鑑みれば、違法・不正行為、反社会的な行為に関与したり、不明朗な資金を受け取ったりした場合はもちろん、秘書給与を肩代わりしてもらっていた場合や、秘書が不明朗な資金を受取った場合なども実名で報じるのが原則とされます。
単なる参考人として捜査当局の聴取を受けたときも、疑惑や事件にかかわったと判断した場合は実名報道されます。
②公務員・教員・大学教授
捜査の対象になったり、不正行為への関与が明らかになったりした場合はもちろん、職務の責任や重さに照らしてその適格性が問われる事実が判明したときは実名で報道されます。さらに教員は子どもや社会に対して強い影響力を持ち、親をはじめ地域住民の関心も高いため、一般公務員に増して高い倫理性が求められています。その分、実名報道がされやすい傾向にあります。
③裁判官・検察官・弁護士・警察官・自衛官
職務の公共性の高さから、職務に関する不正は実名で積極的に報じます。
弁護士の場合は刑事事件になる前、例えば弁護士会の懲戒処分が決まった時点で報道することもあります。
④医師・公認会計士・報道関係者
専門性の高さ、その職務の公共性の高さ、社会的責任の大きさ、実名報道がされやすい傾向にあります。
⑤企業・団体の代表者および幹部
社会的責任の大きさ、社会に与える影響の大きさから、実名報道されやすいといえます。
⑥作家・芸能人・文化人・スポーツ選手等
特定多数・不特定多数に影響を与える立場にあり、社会に対する影響力とそれに伴う責任の大きさを理由に公的存在としての側面を持つと考えられ、実名報道がされやすい傾向にあります。
また、世間の興味といったニーズから、芸能人・スポーツ選手等の家族については、自身が芸能人等でなくても報道されやすいようです。
(2)事件・事故の重大性について
「重大な事件」とは次のような事件を指します。
- ①死傷者数の多い事件
- ②社会的な広がりの強い事件
- ③文明的、国際的な広がりのある事件
- ④動機や態様が特異な事件
- ⑤当事者の属性が注目される事件
連合赤軍事件、地下鉄サリン事件など一連のオウム真理教による事件などは、「歴史的重大事件」として、実名による詳細な報道が求められます。
(3)書かれる側の不利益について
「容疑者」として実名報道されることにより、社会から色眼鏡で見られ更生を妨げられる可能性もあります。
たとえ冤罪であったとしても、名誉回復報道に気が付かない世間の目はあたかも「犯罪者」に対するもののようになりますし、冤罪であったと知ってもなお疑念の目を向けられることもあります。
このような不利益を勘案して、単純な万引きなど軽微な犯罪については実名報道が避けられる場合もあります。
もちろん、この利益衡量については報道機関によって判断が異なる場合があります。
たとえば、2001年に成人式が全国的に荒れた際、高松市では市長があいさつしている最中に新成人が壇上に駆け上がって市長へ向けてクラッカーを鳴らし、威力業務妨害容疑で逮捕された事件がありました。
朝日新聞をはじめ、読売、産経は20歳の新成人4人を実名で報道しました。
朝日新聞は新成人としての自覚が問われる悪質な事件だと考えたことによるとのことです。ただし、毎日新聞は匿名とし、社によって判断が分かれました。
- 2018-07-20
- [CATEGORY]:マスコミ報道の基準, 事件報道は実名が原則, 対マスコミ危機管理
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