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セクハラ従業員[POSTED]:2018-07-10

(1)企業の責任・リスク

使用者は、男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保等に関する法律)や裁判例などから、セクハラを防止しまたは適切に対処し、労働者にとって働きやすい職場環境を保つよう措置する注意義務(安全配慮義務・職場環境配慮義務)を負い、セクハラ行為を認識した場合には速やかに適切な措置をとらねばなりません。

例えば、セクハラ従業員に対し、事案の内容や状況に応じて、懲戒処分、配置転換等の措置を講じるとともに、被害者への謝罪、被害者の労働条件上の不利益回復を行うなどの措置を講じる必要があります。 また、セクハラ行為が真実であった場合、企業による安全配慮義務や職場環境配慮義務の懈怠があったと捉えられる可能性があるため、セクハラ被害の申告や内部通報などがあった場合には、被害者であろう従業員に対し、最大限の配慮をもって対応しなければなりません。

実際にセクハラを受けていた女性従業員から企業にセクハラの被害申告があったにもかかわらず、企業がそれを信じず、調査もそこそこにセクハラに該当するほどの行為はなかったとして何ら適切な処置を講じなかった場合、企業はその被害女性従業員に対し損害賠償責任等を負う可能性があります。
また、被害女性従業員が加害者に対してセクハラ訴訟を提起された場合は、組織内でセクハラ行為があったことが世間に知られてしまうため、レピュテーションの毀損や会社の信用失墜も避けられないでしょう。
一方、セクハラ従業員の処分に関して不適切な対応を行った場合も、会社側が訴えられる可能性が十分に考えられます。
例えば、セクハラ行為を行った男性従業員の事情を聴取せずに、単にセクハラ被害を受けたと申告している女性従業員の供述だけに基づき、当該男性従業員懲戒解雇した場合、「解雇権の濫用」として解雇無効を求めて、男性従業員側から調停や訴訟の提起がなされることがあります。
会社にとって不利な事態を回避する上でも、セクハラ事実の有無の確認や対処については慎重かつ最大限の配慮が必要となりますので、速やかに弁護士に相談し対応すべきです。

(2)セクハラ従業員への対処法

セクハラ行為が、強制わいせつ罪など刑罰法規違反の行為に該当する場合は、職場の風紀秩序を著しく乱し、会社の名誉・信用を著しく傷つけるものとして、懲戒解雇が可能な場合といえるでしょう。
一方で、刑罰法規違反に当たらない程度の性的要求・交際強要の場合は、懲戒解雇その他懲戒処分が可能か否かは事件の内容によって異なりますので、個別に判断せざるを得ません。
その際、加害行為、従業員の地位、会社の取り組み、反省の態度などを総合的に勘案した上で、懲戒処分が可能か判断することになります。
場合によっては、①軽い懲戒処分(譴責・戒告など)や配置転換などの処分を行い、②さらに改善が見られない場合に所定の懲戒手続きのうえ重い懲戒処分(懲戒解雇など)を科すといったステップをとることも必要になると考えられます。

(3)対処実施のポイント

管理職の男性従業員が部下の20代の女性社員に対して、コミュニケーションを図り女性が働きやすい環境を作るためと称して、勤務後にたびたび2人だけの食事に誘い、複数回2人で食事に行ったところ、男性従業員が部下の女性を会員制クラブに誘い、その個室内で手や体を触わったというようなケースでは、
男性従業員のセクハラ行為は強制わいせつ罪に該当する可能性が高いといえます。仮に、調査の結果、強制わいせつ罪に該当する行為であった場合は、懲戒解雇処分を行うことを検討します。
このとき、会社側が、男性従業員が有能な従業員であることを考慮し、明らかに懲戒解雇とすべき場合であるにもかかわらず、懲戒解雇をせずまた適切な処分を行わなかったとき、被害女性従業員の怒りに触れる可能性があります。その場合、被害女性従業員から会社に対し損害賠償訴訟など提起されるおそれがあります。
このような事態になると、レピュテーションの毀損や信用失墜を招きます。セクハラ行為を行った者の処分に関しては冷静かつ適切な対応が求められますので、弁護士に相談して慎重に進める必要があります。
他方、被害を受けた女性従業員がセクハラ行為により精神疾患を患っている場合には、最大限その回復に向けた配慮を行うべきでしょう。配慮を欠いた対応を行うと、訴訟リスクがありますので注意が必要です。

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