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医師・歯科医師の場合[POSTED]:2018-07-19
(1)医道審議会による処分
刑事事件で罰金刑以上を受けた場合には、医道審議会にかけられ免許取消等の行政処分を受ける可能性があります。
医道審議会制度とは厚生労働省の審議会で、医師、歯科医師、理学療法士・作業療法士などの免許取消・停止などの行政処分とその手続きを行います。処分対象は刑事事件に限らず、医師の不祥事一般に対して医道審議会が処分を下します。刑事事件で責任を問われなくても、医道審議会による処分が下されることはあります。富士見産婦人科病院事件では刑事裁判で起訴されませんでしたが、民事訴訟で医療行為の責任が認定された医師に対して行政処分が下りました。
医道審議会は取消しの要件や議論の内容を一切公開していませんが、厚生労働省のHPで処分された事案の概要については発表されています。
患者への性犯罪や診療報酬不正取得、全国で大きく報道された医療関連犯罪(麻酔の悪用、産婦人科薬の悪用など)が機械的に免許取消とし、それ以外であれば免許取消しにはならないという意見もあるようです。
医道審議会は5時間ほどの間に70人の審査を行い、1人あたり約4分で起訴状と判決文のみによって審理をします。
行政処分がされるのに先立ち、当事者には意見陳述の機会が与えられます。
免許取消し相当事案に対しては「意見の聴取」、免許停止相当事案に対しては「弁明の聴取」です。代理人として主張を伝えることが大切である反面、あまりにも前面に出てしまうと、団体の内部規律の問題に立ち入ることになり、かえって所属団体の反感を買うことにもなりかねません。
医道審議会や処分庁に当事者についての有益な情報をより多く提出し、処分に際しての資料としてもらうことが重要です。具体的には被害弁償の事実、当事者の真摯な反省、職場との調整、これまでの医療への貢献等を主張します。
医師免許の取消しは基本的に「永久剥奪」で、医師国家試験を再度受験することは可能ですが、合格しても交付されません。これは、医師法の交付要件に「医事に関し不正のあったもの」には交付を行わないと明記されているためです。医師が刑事事件において罰金以上の刑に処せられた場合は、判断に裁量が認められる相対欠格事由に該当しますが、精神病などと異なり不祥事の場合は免許が再交付されることは実務上、ありません。
医事に関し不正のあったもの」の記述は歯科医師法にも見られるため、歯科医師免許も取得できなくなります。
(2)処分を争う方法
厚生労働大臣に対する異議申立て
行政処分その他の公権力の行使にあたる行為に関して不服のある者が、処分庁に対して不服を申立て、その違法・不当を審査させ、違法・不当の是正や排除を請求する手続きです。
異議申し立てをする場合、処分があったことを知った日の翌日から60日以内にしなければなりません。
裁判所に取消訴訟を提起
行政処分等の取消しを求める訴訟。取消訴訟をする場合、処分があったことを知った日から6ヶ月が出訴期間です。
(3)厚生労働省への通報
医師が罪を犯した場合、その内容は必ず検察から厚生労働省へ通報されます。法的に刑の言渡しの効力が消滅(実刑であれば刑期満了から10年、執行猶予であれば執行猶予期間の満了)した後、罰金の言い渡しから5年たてば、処分を受けていても医師免許の再申請をすることは可能です。しかし、医師免許が再交付された例は過去の犯人蔵匿罪についての1件のみです。
(4)医師・歯科医師の行政処分についての答申実例
平成29年9月21日の医道審議会医道分科会議事要旨より
医師(13件) | ||
---|---|---|
医業停止3年 | 2件 | 覚せい剤取締法違反(1)、準強制わいせつ(1) |
医業停止9月 | 1件 | 医師法違反(1) |
医業停止6月 | 1件 | 道路交通法違反・過失運転致傷(1) |
医業停止5月 | 2件 | 道路交通法違反(1)、公然わいせつ(1) |
医業停止4月 | 1件 | 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反(1) |
医業停止3月 | 6件 | 医師法違反(4)、迷惑行為等防止条例違反(1)、診療報酬不正請求(1) |
歯科医師(8件) | ||
---|---|---|
歯科医業停止3年 | 1件 | 詐欺(1) |
歯科医業停止1年6月 | 1件 | 大麻取締法違反(1) |
歯科医業停止3年 | 6件 | 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反(1)、迷惑行為等防止条例違反(1)、診療報酬不正請求(4) |
過去の事案について
平成29年3月3日
医師(12件) | 歯科医師(6件) | ||
---|---|---|---|
医業停止3年 | 4件 | 歯科医業停止2月 | 1件 |
医業停止2年 | 1件 | 歯科医業停止3月 | 5件 |
医業停止1年 | 1件 | ||
医業停止4年 | 2件 | ||
医業停止3年 | 3件 | ||
戒告 | 1件 |
平成28年9月30日
医師(13件) | 歯科医師(13件) | ||
---|---|---|---|
免許取消 | 1件 | 歯科医業停止3年 | 1件 |
医業停止3年 | 4件 | 歯科医業停止1年 | 2件 |
医業停止2年 | 3件 | 歯科医業停止4月 | 2件 |
医業停止1年 | 1件 | 歯科医業停止3月 | 10件 |
医業停止9月 | 1件 | ||
医業停止3月 | 4件 | ||
医業停止1月 | 1件 |
平成28年3月11日
医師(13件) | 歯科医師(6件) | ||
---|---|---|---|
医業停止3年 | 3件 | 歯科医業停止3年 | 2件 |
医業停止2年 | 3件 | 歯科医業停止8月 | 1件 |
医業停止4月 | 3件 | 歯科医業停止3月 | 13件 |
医業停止3月 | 4件 |
- 2018-07-19
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