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「笑いが止まらないよ。」

Ｋ男は、友人の医師Ｘ男からお見合いパーティの話を聞きました。
「婚活ブームってほんとだな。受付嬢から社長秘書、ＣＡまでキレイどころがこぞってお見合いに参加してるんだよ。医師だと言えばすぐに脚開くんだもん、笑いが止まらないよ。」
Ｋ男が、医師限定のお見合いパーティについてネットで調べたところ、男性は参加費無料か女性と同額のものが多いようでした。
裏情報も見つけました。医師限定パーティに潜り込む方法が紹介されています。それを参考に、医師限定パーティに潜り込んだ安サラリーマンのＫ男。
身分証明に必要な物は「運転免許証（公的な写真付き証明なら何でも可）」と「医師免許証」だけの場合がほとんど。医師免許証はコピーでも問題ないようです。それも入場の際に確認されてすぐに返されます。

Ｋ男は恐る恐る、サイトに載っていた医師免許証のコピーのサンプルに、自分の運転免許証の個人情報を書き込んで手渡しました。医師免許証のひな形は、サイトに載っていた方法で手に入れてプリントアウトしていました。氏名と生年月日、国家試験合格年及び施行回、免許証交付年月日、厚生労働大臣の署名、厚生省医政局長の署名を書き込むことになっています。「パーティ業者は、運転免許の氏名・生年月日が医師免許証と一致しているかを確認するだけ」、とサイトにありました。何だか犯罪行為にあたり刑事事件に発展するような気がして不安はあったのですが、実際にはスタッフは書類を一瞥もせずに「本日はようこそ」と、偽の医師免許証のコピーと運転免許証を返却してきました。やはり刑事事件として問題となり、刑事事件弁護士に相談しなければならなくなるようなことはないな、Ｋ男は安心してしまいました。

パーティは参加者のほとんどが女性。医師限定のパーティとあって、女性の方から積極的に話しかけてきます。Ｋ男は10人程度の女性と話し、デートをしました。
デートの時には安居酒屋で、割り勘で済ませることができました。親が在学中に亡くなってしまい、苦学生で奨学金の借金があること、まだ勤務医なので給料が安いことを強調したところ、逆にそれが受けたようです。医師であるが故の将来性はあるものの、庶民感覚も持ち合わせていると善解されたのです。
Ｋ男は結局、連絡先を交換した10人中、4人の女性と肉体関係を持ちました。デートを重ねるうちに、医師でないことがバレそうになったことは一度もありません。病院での話は適当にごまかしました。嘘をとつとつと語っているうちに、あたかも自分が本当に医者であるかのような錯覚に陥ったのは不思議でした。話に詰まると、女性の職場の話を逆に聞き返すことで切り返しました。

医師免許証の偽造をパーティ業者は見破れない？

Ｋ男が医師を詐称して女性と肉体関係を結んだとしても、貞操を騙し取ったにすぎず、詐欺罪の刑事事件にはなりません。
医師でない者が医師の名刺を女性に渡した場合は、他人の名刺の不正使用に当たり、私印不正使用罪が成立し刑事事件になります。お見合いパーティで知り合った女性に、開業医の名刺を渡して医師になりすました男性が、実際に逮捕されています。携帯電話の番号を教えない男性を不審に思った女性が、名刺に記載された病院を訪れて発覚した事件でした。
慰謝料請求についてはどうでしょうか。婚約破棄や、結婚の承諾の撤回をした男に対して、慰謝料の支払いを命じた判例は多数あります。しかし、婚約に至らない男女交際の解消について慰謝料が認められることは、通常はありません。ただし肉体関係を続ける目的で、結婚意思があるかのように装った極端な場合に限り、慰謝料が認められることがあります。

では、Ｋ男は婚活パーティ業者から訴えられることはないのでしょうか。
Ｋ男が医師免許を偽造した点は、文書偽造の刑事事件になります。業者に対しては業務妨害にあたり刑事事件になるでしょう。
では、実際は結婚するつもりがないのに婚活パーティに参加したという点については、刑事事件として問題はないのでしょうか。もちろん、結婚意思があるかどうかは内心の問題ですので、冷やかしの程度であればバレません。本当は結婚する気がなくても、あると言い張ればよいだけです。何らかの理由でバレたとしても、せいぜい主催会社に対する規約違反になるだけでしょう。「次から来ないでください」で終わります。主催会社に対する違約金も、言いなりの金額を支払う必要まではない場合が多いといえます。

情報開示が足りない男に注意

不逞の輩を女性が見抜くコツはあるのでしょうか。刑事事件弁護士の立場から。いくつかアドバイスしたいポイントがあります。
まず、自分の情報を開示しない男性は怪しんだ方がよいでしょう。嘘は一度つくと、とてつもない記憶力が要求されます。発言が矛盾したら怪しまれるからです。当然、出す情報はできるだけ少なくなり、秘密主義になります。
女性からの電話に出ない、自宅に入れようとしない、質問に質問で答える、平日デートだけで土日を割かない、外出デートなしで家での性行為だけ、などの行動は怪しむべきでしょう。不都合な真実があったり、適当に済まされていたりする可能性があります。
関係を二人だけの間で完結させようとする男にも要注意です。自分の友達を紹介しようとしない、あるいは女性の友人に会わなかったり、悪口を言ったりするようなパターンです。
以上にあてはまるなら、遊ばれている恐れがあります。

• 2018-07-10
• [CATEGORY]：危機管理における男女トラブル, 婚活トラブル
• [AUTHOR]：危機管理の弁護士･永田町法律税務事務所