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建物の占有者が任意売却に協力しない[POSTED]:2018-07-27
抵当権の目的として取った建物を任意売却の方針を立てて債務者と交渉を開始しました。すると、数か月前より同物件を債務者より賃借したと主張する暴力団風の者が、この物件には高額の費用がかかったので、その費用が支払われない限り任意売却に協力しないといっています。どのように対処したらよいでしょうか。
1.任意売却のメリット
不動産競売手続による売却では、物件を必要としている具体的な買主の需要を前提としているのではなく、さらに裁判所の手続を経由した上で、一定期間における早期の売却が求められているため、一般市場で売買を行う際の価格と比較する場合には、一定の減価が生じると考えられます。
つまり債権者は、担保権の対象となっている物件から少しでも多くの回収を図るため、不動産仲介業者等を利用することにより、物件を必要としている買主を探し、任意売却することでメリットを感じることになります。
2.任意売却のデメリット
しかし、任意売却を行う上で、所有者の協力は必要不可欠であるため、物件の所有者が任意売却に対して応じる意思を持っていることが前提となり、さらに、利害関係人の同意を必要とする制度が任意売却なので、担保権者や賃借権等の物件に関する使用権を持つ者が同意しないのであれば、任意売却による物件の換価は成立しないといえます。
これにより、利害関係人の同意が任意売却には必要であることに付け込み、名目的な賃借権等を設定等し、不当な立退き料などの金銭を要求するというような執行妨害行為が行われることとなるのです。
3.執行妨害行為への対処
手口から、本事案は、名目的な賃貸借契約に基づいた修繕費あるいは有益費返還請求権(民法608条)を仮装し、法外な請求を行っているものであるといえます。このような請求がされたときには、任意売却による処理を諦め、法的な手続である担保権実行に切り替えることを検討するべきであるといえます。
また、執行妨害者は不動産競売手続に対して、物件に対する有益費を支出したという根拠に留置権を主張し、物件への居座りを行う可能性も考えられます。
しかし、抵当権設定登記から遅れて設定された賃借権では抵当権に対抗することが難しく、さらに平成15年の民法改正によって、短期賃貸借制度が廃止されているため、本事案において、執行妨害者の賃借権は保護の対象とならず、有益費償還請求権は認めらえないことになります。
よって、被担保債権が認められないことから、留置権の主張も認められません(民法295条)。
近年では、企業の法令遵守(コンプライアンス)が盛んに議論されていますが、コンプライアンスの重要事項としては、暴力団等の不法勢力に対して利益を提供しないという考えがあります。本事案のような場合、暴力団等から不動産競売による減価の範囲内での解決を打診してくることも考えられますが、そのような解決では、経済的な観点における合理性はあると思われますが、コンプライアンスという観点からみれば容認されるようなことではなく、結局は高くつく結果になることが予想されます。
任意売却にこだわらず、暴力団のような者からこのような方法を出されたときには、毅然とした態度で法的に対応することがよいと思われます。
- 2018-07-27
- [CATEGORY]:民暴対策Q&A, 企業編(法務総務), 反社会勢力・クレーマー対応
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