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    [CATEGORY]:反社会勢力・クレーマー対応

抵当ビルの不法占拠と競売申立て[POSTED]:2018-07-27

テナントビルについて抵当権の設定を受けていますが、債務者会社が不渡処分を受けました。その頃から、抵当ビルに暴力団員風の者が出入りするようになりました。債権者としてどういうことに気をつけるべきでしょうか。また、法的な措置で保全をするには、どのような手段があるでしょうか。

占有者を特定した際に、占有者が何の占有権原を持たない不法占有者であった場合、債務者の権利を代位行使することによって、占有者を排除することが可能となります。
また、競売を申立て、民事執行法55条の規定に基づいて執行妨害目的の占有を排除することを検討することもできます。

1.注意すべきポイント

債務者の信用が悪化している時期に、執行妨害目的で抵当物件を第三者に占有されるというケースがありますが、このような場合における執行妨害対策のポイントとしては、①占有者の特定、②占有権原の有無の調査、③妨害的占有に対する保全措置の選択があります。
抵当権者は、抵当物件の占有状況を強制的に調べる権限はないため、債権者は債務者への信用に対して不安を抱いた際には、郵便受けの表示や写真等で占有状況を調査し、できることなら占有権原も確認しておくとよいです。調査によって得られた情報により、債権者は妨害的占有に対する対策を選択します。
債権者の抵当権の換価実現の妨げとなり得る妨害的占有に関しては、抵当権の実質価値を侵害することがあるので、早急に占有を排除するべきであると思われます。

2.抵当権に基づく明渡請求権

平成11年11月24日の最高裁判決では、抵当権者が、不動産の所有者が有している不法占有者に対して、妨害排除請求権を代位行使すること、ならびに抵当権自体に基づく妨害排除請求権の行使として、目的不動産を自己へ明渡請求することができることもあると認めました。
また、平成17年3月10日の最高裁による判決では、適法な賃貸借の事例であっても、一定の条件が揃うことで、抵当権自体に基づく妨害排除請求権の行使として、この場合も直接自己へ目的不動産を明渡すことができるとされています。
つまり本事案では、占有者による占有が不法占有である場合だけでなく、賃借権がたとえ適法であったとしても賃借権の設定をする上で競売手続を妨害する目的があるなどの、一定の条件が満たされた場合には、債権者は占有者に対し、抵当物件を直接自己に明渡すように求めることが可能です。

3.民事執行法に基づく保全処分

競売を申立て、抵当権を実行する場合、差押完了後に、執行裁判所によって作成された現況調査報告書により、占有者や占有権原等の事実が明らかとなるので、報告書によって情報を得ることが可能となります。
しかし、現況調査報告書が作成されるまでに占有者によって物件を占拠されてしまうことがあるので、早急に妨害的占有者が物件を占有しないよう注意を払っておくことや、妨害的占有者に対して占有の排除を行う準備をしておくことが大切です。
つまり債権者自身も、独自で抵当物件の占有状況や占有者の占有権原を調査することが重要といえます。

調査した結果、未だに占有が債務者にあるときには、民事執行法55条1項に基づいて、執行妨害占有者に占有移転をされないように、占有移転禁止の保全処分を申立て、それによる決定を公示執行することにより、債務者の占有移転を禁止し、その後に占有をしようとする妨害者に対して、公示により、保全処分が執行される事実を知らせることになります。

仮に第三者に占有を開始されてしまった場合、民事執行法55条1項により、第三者に対し、退去を命ずる保全処分を申立てることが可能です。

また、平成15年に行われた民事執行法の改正により、執行官保管命令が、他の保全命令と同じ要件に下、発令することができるようになり、債権者は執行官保管命令の申立てができるようになりました。

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