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    [CATEGORY]:反社会勢力・クレーマー対応

暴力団から脅される(1) 融資の申込み[POSTED]:2018-07-27

私は銀行の支店長代理です。融資の申込みの条件が整っていたので、私の名刺に「融資実行の予定日は○月○日」と記載して渡しましたが、後日になって、申込者が暴力団に関係あるとの情報に接しました。融資を取りやめることができるでしょうか。

1.暴力団関係者への銀行融資の意味

銀行は、預金の運用に関して預金者に責任を負っているだけでなく、金融経済を支える上で大きな社会的な責任を負うことになっています。

そもそも、暴力団関係者に対して融資を行うことは、不良債権化する可能性も高く、暴力団の資金源となりかねないので、社会的責任を負う立場にある銀行としては、回避する必要があります。

2.融資取りやめの可否

融資とは、実行日までの間に融資障害事由が生じることや、また思わぬ障害事由が発見されるなどの可能性もあるので、一般的には実行される瞬間まで未定ということになります。
つまり、本事例のように融資実行予定日を名刺に記載してあったとしても、これは単なる予定にすぎず、銀行が履行義務を負うものではないといえます。これにより、銀行はどのような相手とどんな融資契約を締結するのかは自由な判断で決定することができるので、相手方が暴力団関係者であれば、それを理由に融資の実行を行わないという意思決定をすればよいのです(契約自由の原則)。
また、このような場合、相手方に対して銀行が意志決定に基づく具体的な理由を明示する必要はなく、「諸般の事情を考慮し、今回は融資を見送ることにした」というような一般的な理由を述べておけばよいのです。

3.契約成立といわざるをえない場合

融資契約締結後に、相手が暴力団員であるという事実が判明した場合にはどうなるかということですが、契約が締結すると、当事者双方には一定の限られた場合(詐欺、錯誤等)以外では、契約の履行にむけ、法的に拘束される立場に置かれることになるので(契約の拘束力)、相手が暴力団関係者であるというだけの理由では、融資契約を解消するということは困難であるといえます。
よってこのような場合には、資金の使途、差入れ担保の価値等についてしっかり調査し、返済状況を把握することで、不良債権にならないように注意することが必要です。

4.約款での規定化

このような状況を回避するためにも、融資契約締結の段階で、いざというときに契約を解消することができるようにしておくため、融資約款上において、「暴力団その他公序良俗に反する団体に所属している者に対する融資は行わない」というような内容をあらかじめ定めておき、これと同時に「自らは暴力団等の反社会的勢力とのかかわりがない」ということを誓約させることでとても有意義なものとなります。相手方も契約締結の際にこれらの条項を承知した上で契約を結んであるので、後に相手方が暴力団関係者であることが判明した場合に、不実の告知である点も含め、約款の条項を理由として契約を解除することができると思われます。これは、銀行内部における対反社会的勢力への対応の確立や暴力団に対する心理的抑制効果が期待できるとともに、融資の面において銀行が暴力団排除を宣言していることが明らかであるため、有効的な対応策であるといえます。
さらに、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」についても、各種の約款において暴力団排除に関する条項を取り入れることや、不実の告知に着目した契約の解除における手法が示されています。

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