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ネット炎上の対処法[POSTED]:2018-07-09

(1)害意あるネットトラブルへの対処法

会社側に非がある事件であった場合でも、そのような事実がない場合でも、特定の個人や一定の集団から、インターネットを介して、故意に執拗な誹謗中傷行為、迷惑行為を受けるときがあります。 会社側に非があるか否かは別にして、通常の営業活動を行う全くの一般企業や個人すら、いつでもネットトラブルに巻き込まれる可能性があります。ネットトラブルによる被害を最小限に止めるために、即座に対応できる危機管理体制を整えておかねばなりません。

ア 被害に関する証拠収集・保存

被害を受けた者が、誹謗中傷行為、迷惑行為を行った投稿者・書き込み者、ホームページの作成者、掲示板の管理者(以下「投稿者等」)の法的責任を追及する場合、被害を受けた者が被害の内容・態様、法的に保護されるべき利益が侵害されたことを証拠によって具体的に証明する必要があります。
また、侵害された権利・利益、侵害の程度によって法的な救済方法が異なります。被害を受け、その救済を求めようとする場合は、冷静に被害の内容・態様を認識したうえで、該当箇所の情報のプリントアウトまたは記録媒体への記録等によって、証拠として保存しなければなりません。
また、該当箇所が削除される可能性もあるため、早急に保存行為を行うべきです。
そのとき、今後の司法手続(訴訟・仮処分の申立て)でも利用可能な方法で行う必要があります。例えば、該当箇所の情報をプリントアウトしたものを公証役場にて確定日付を付してもらったり、該当箇所の情報のログを法的に保存するため証拠保全手続を行ったりする証拠収集方法もあります。
適切な証拠収集方法は、案件により異なりますので、弁護士に相談して行うとよいでしょう。

イ 投稿者、プロバイダ等の特定

投稿者等の情報を得るために、ホームページやインターネット上の掲示板等を管理しているインターネットサービスプロバイダ、インターネット上の掲示板の管理人、ソーシャルネットワークサービスの運営者など(以下「プロバイダ等」)に、その情報の開示を請求することになりますが、まずは、請求先となるプロバイダ等を特定しなければなりません。

ホームページであれば、ドメイン登録業務を行っている企業の検索システム(「WHO IS」など)を利用して、ホームページのURLのドメイン名で検索すれば、プロバイダ等の情報を得ることができます。
プロバイダ等を特定できた場合、次に、投稿者等の情報(IPアドレス、住所、氏名等)を入手する手続きを行います。入手方法としては、主に2つあります。

① 弁護士を通じて開示請求(裁判外の手続)

プロバイダ等に対する開示請求は、被害者自身が電話、手紙を利用して請求したり、弁護士に依頼し、内容証明郵便を利用して請求したりすることもあります。
請求にあたっては、プロバイダ等に対して任意の開示を要求したり、いわゆるプロバイダ制限責任法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限および発信者情報の開示に関する法律)に基づき請求(同法4条)したりする方法があります。プロバイダ制限責任法による場合、開示請求の条件がありますので、注意が必要です。
しかし、一般的に、プロバイダ等は、開示請求を拒絶し、投稿者等の情報が開示されません。そのため、裁判上の手続きによる開示要求を行うことになります。

② 裁判所を通じた開示手続(裁判上の手続)
②-1 発信者情報開示訴訟の提起

プロバイダ等に対し、裁判所を通じて、発信者の住所・氏名の開示を請求する場合は、発信者情報開示訴訟を提起し、プロバイダ等から書き込み者等の情報を開示させます。もっとも、勝訴し開示させるまでに時間がかかります。
実名登録する会員サイトの場合であれば、サイト管理者が任意の開示請求に応じないときは、すぐに訴訟を提起できますが、投稿先や書き込み先が匿名の掲示板・ブログである場合は、サイト管理者が投稿者等の個人情報を有していません。そのため、先に、②-2の仮処分の申立てを行います。

②-2 発信者情報開示仮処分の申立て

投稿先や書き込み先が匿名の掲示板・ブログである場合、その管理者は、投稿者等の個人情報を有していないため、投稿者が利用しているプロバイダ等を特定したのち、プロバイダ等を相手に発信者情報(住所氏名)の開示請求を行うことになります。プロバイダ等の特定のためは、投稿者等のIPアドレスが必要です。
一方、管理者は、投稿者のIPアドレスなどのアクセスログを、通常3~6か月ほどで削除してしまうことが多く、②-1の訴訟を提起していたのでは、勝訴前に削除されかねません。
そこで、発信者情報開示仮処分の申立てを行い、匿名掲示板等の管理者に、IPアドレスの記録を保全させ、仮に開示させます。

通常の開示請求プロセス

匿名の掲示板・ブログである場合
通常の開示請求プロセスにおける裁判外の手続前に、
掲示板管理者に対し、IPアドレスの開示を請求し、プロバイダ等を特定

ウ 投稿・書き込みの削除請求

投稿者等が特定された後は、これ以上の投稿・書き込みによる被害を防ぐために、問題の投稿・書き込みの削除請求を行います。
問題の投稿・書き込みがそのまま放置され、インターネット上に残っていると、それを見たネットユーザーが同様の投稿・書き込みを行い、または、問題の投稿・書き込みをリンク付することで、更なる被害の拡大につながるおそれがあるからです。

① 投稿者等本人への直接請求(裁判外の手続き)

投稿者等本人に対し問題の投稿・書き込みの削除を請求することが考えられます。
ネット攻撃は、一般的に、投稿者等がその高い匿名性に安心するがゆえに生じるものですが、投稿者等本人が直接削除請求され、その匿名性がなくなったことに気づくと、自主的に問題の投稿・書き込みを削除することも考えられます。

② プロバイダ等への削除請求(裁判外の手続き)

投稿者等本人が削除に応じない場合は、プロバイダ等に対し、問題の投稿・書き込みの削除を請求することが考えられます。
ただ、一部のプロバイダ等では、通常のネガティブ情報や名誉を毀損するような書き込み・投稿に関する削除請求であっても応じないポリシーを掲げているところもあり、削除請求に応じるかどうかはプロバイダ等次第です。

③ 削除請求訴訟・仮処分の申立て(裁判上の手続き)

投稿者等本人やプロバイダ等が削除請求に応じない場合は、問題を強制的に解決するために、削除請求訴訟や削除仮処分の申立てという手段を取らざるを得ません。

削除請求訴訟・仮処分の申立て(裁判上の手続き)

エ 損害賠償請求

投稿者等の特定後、その投稿者等に対して、問題の投稿・書き込みにより被った損害の賠償を求めることができます。
また、プロバイダ等には、問題となった投稿・書き込みをホームページや掲示板から削除する義務が課せられていますので、その義務に違反し削除しなかった場合には、削除せずに放置したことにより被った損害を請求することも可能です。損害賠償にあたっては、民事訴訟を提起する前に、交渉により賠償を求めることも考えられます。しかし、特にプロバイダ等への損害賠償については、元々削除請求に応じなかった者ですので、交渉により損害賠償に応じるとは考えにくく、民事訴訟によるしかないと思われます。

上記のような交渉、民事訴訟においては、相手に対して心理的圧迫を与え、損害賠償請求を効率的に行う上でも、交渉・訴訟に精通した弁護士に依頼して進めるのが効果的です。

オ 刑事告訴

被害の程度、投稿者等本人の態度、行為の悪質性などから必要に応じて、収集した被害の証拠をもって、最寄りの警察署に相談した上で、告訴状を提出することを考えます。

ネット炎上の事件では、名誉棄損罪(刑法230条)、侮辱罪(同法231条)、信用毀損罪(同法233条)、偽計業務妨害罪(同法233条)、威力業務妨害罪(同法233条)、脅迫罪(同法222条)といった犯罪に該当するケースが考えられます。
告訴状は、企業が独自に作成して警察署等に提出するよりは、弁護士が作成する方が受理されやすい傾向にあります。
なお、企業に危害を加える旨の犯行予告がなされているケースでは、傾向として、警察としても動かざるを得ないと判断し、告訴状の受理後に比較的早く対処してもらえるようです。

(2)対処実施のポイント

投稿者等の特定から問題の投稿等の削除に至るまで、非常に多くの時間と労力とコストを要します。
そのため、投稿・書き込みによる、誹謗中傷の拡散の範囲と程度、誹謗中傷に対する顧客・ネット・マスメディアの反応、会社経営への影響を考慮し、対処の実施を検討することになります。
害意あるネットへの投稿・書き込みにより、経営への影響が甚大であることを考えると、投稿者等の特定から問題の投稿等の削除、さらに、損害賠償、刑事告訴まで行わざるを得ないと考えられます。
また、上記の法的措置以外にも、誹謗中傷が真実に反する情報であるとして、積極的にプレスリリースを行うことが考えられます。
その際、誹謗中傷のどの部分が真実と反するのか、投稿・書き込みがなされるにいたった理由や事情に関する見解、今後の対応方針などを明確にし、ネット攻撃に対する断固たる態度を示すことが重要です。
また、このような態度を示すことにより、将来的なネット攻撃の予防にもつながります。プレスリリースを行う際には、中途半端な態度を示したり、曖昧な反論に終始したりすることのないように注意が必要です。このような態度や反論は、逆に、世間に誹謗中傷が真実かもしれないと思わせる危険があり、また、将来のネット攻撃の予防にもなりません。
そのため、プレスリリースの内容が適切なものなのかを含め、事前に弁護士に相談して進めるべきです。

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