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公立住宅からの暴力団排除

市営住宅、県営住宅、都営住宅等の公立住宅から暴力団員を排除することは可能でしょうか。公立住宅に居住申込をした者が暴力団員である場合、暴力団員であることを理由に入居を拒否することはできるのでしょうか。また、既に公立住宅に居住している者が暴力団員であったことが判明した場合、暴力団員であることを理由に公立住宅からの明渡しを請求できるのでしょうか。

1.結論

条例によって、「暴力団員でないこと」を入居者資格として規定することで、暴力団員の入居を拒否することは可能です。
また、既に暴力団員が居住している場合は、住居明渡しの要件として「暴力団員であることが判明したとき」を条例の中で規定し、暴力団からの脱退がないような場合には、公立住宅の明渡しを請求することにより、暴力団人を排除することができるという考え方が有効であるといえます。

2.公立住宅と暴力団

最初に、自治体が運営する住宅に対して「公営住宅」という言葉を使用することがありますが、「公営住宅」とは公営住宅法に基づき運営される住宅のことを指すので、ここでは、自治体が運営する住宅の全てを指す「公立住宅」という言葉が使用することとします。

最近では、各地の公立住宅において、暴力団員を排除するための条例が制定されるようになりました。暴力団という存在は、対立抗争等によって、心理的かつ物理的に周囲の市民に対して脅威を与えるものであり、暴力団員が公立住宅に居住することで、対立関係にある暴力団からの攻撃の巻き添えとなる危険性が常につきまとうため、近隣住民の安全と平穏を著しく脅かす可能性が高く、ときには出入りする暴力団員からの嫌がらせや威嚇などの被害を受けることも考えられます。さらに、公立住宅は恒常的に不足している中で、反社会的勢力の構成員が社秋から恩恵を受けるということは市民感情や社会通念的な面で考えても許容されにくく、ましてや税金で賄われている公立住宅に、低廉な賃料で暴力団員が居住することで、浮いた金員が上納金として暴力団に流れ、結果として地方自治体が暴力団の資金源を援助するという状況が生じるため、より暴力団を公立住宅から解除する動きが活発化しているのです。
このようなことから、条例により、暴力団を排除することが認められると思われます。

3.公立住宅からの暴力団員排除という目的の正当性

暴力団員を公立住宅から排除する正当性については、近隣住民に対して生命や身体の安全を確保する必要があることや、必要な住宅の供給を確保するため、また税金を適正に使用するためなどの理由を考慮すれば、認められると思われます。

4.憲法14条(法の下の平等)や憲法25条(生存権)との整合性

平成19年4月に起きた都営住宅での暴力団員による立てこもり発砲事件や、同じく平成19年後半に頻発して起きた発砲事件等からみても、暴力団の構成員は銃器を不法に持つことが恒常化していることから、抗争時以外の場合においても、発砲事件を起こす傾向があるといえます。これにより、暴力団員が公立住宅を利用することで、当該住宅や近隣住民が常に危険にさらされることになります。特に、生命や身体を侵害されれば手遅れになるので、国や自治体はできる限り侵害を防止する措置が必要とされ、その措置の一つとして暴力団を公立住宅から排除することの正当性は認められると思われます。

また、暴力団員とは、憲法14条1項に示されている性別や門地などのような、逃れることができないといった性質を持っているものではなく、自らの意思によって暴力団から脱退することも可能であり、さらに脱退さえすれば居住することが認められることから考えても、不当な差別的扱いには該当しないと思われます。

次に、憲法25条における生存権の保障についてですが、暴力団排除条項があることによって、暴力団員が生活の場を確保できない、あるいは住宅の明渡しによって生活の場を失う可能性があることから、整合性が問題視されます。その中でも、入居中の暴力団員に対して、暴力団排除条項を適用させ、住宅の明渡しを求めることが認められるかは大きな問題になるのです。
暴力団排除条項が適用されることによって、暴力団員の入居者は住宅の明渡しを余儀なくされるのですが、住民の平穏な生活の確保や反社会的勢力者の市営住宅利用による恩恵の排除という目的を達成するためには、住宅の明渡しが必要不可欠な方法であり、またある程度の一定期間を設け、その間に暴力団から脱退することを勧告することによって、入居を継続する余地は与えることになるので、著しく合理性を欠く裁量の逸脱や濫用に該当するとはいえないので、生存権を不当に侵害しているとは考えにくいです。

5.条例改正前からの居住者についての条例適用

現在では、暴力団排除条例は各地で規定されていますが、条例が規定される前に既に入居を完了していた者に対しても改正後の条例を適用することができるのかということになります。

行政法規不遡及の原則とは、行政法規の効力が発生する前に終結した事実については当該法規を適用しないという原則であり、継続した事実に対して新たな法規を適用することを防げるものではないと解釈されます。
公立住宅などの利用関係は、給付行政上における行政契約基づいて行われるため、一律平等に実施しなければなりません。給付の条件としては、法律または条例で定められているのが通常であり、一定の供給条件に即して締結されるため、各個人の希望によって給付の内容が個別的に変わるということはないのです。

給付行政では、行政側に対して継続的な役務の提供を義務付ける一方で、事情変更の際は、たとえ契約期間中であっても、一方的に料金およびその他の契約条件を変更できるとされています。
つまり、公立住宅の管理条例に関しては、改正する可能性があるということになり、入居時の管理条例が入居後に改正されていた場合であっても、入居者に対しては、改正後の管理条例が適用されるのが当然であるといえます。

ただし、条例制定前から居住している者に対する排除に関しては、一定の配慮が必要であるといえますが、近隣の居住者の生命身体および住環境の安全と比較すれば、排除するべき必要性は高いと思われます。
暴力団から脱退することで入居が可能である点からみても、排除に対する許容性を基礎づけるための要素となり得るといえます。

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