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建物占拠者の氏名の特定

暴力団に建物が占拠されて、占有者が2、3日ごとに入れ替わっているようです。明渡しを求めるための法的手段をとりたいと思いますが、誰を相手としたらよいのか分かりません。対応策を教えてください。

1.相手方特定の必要性

法的に建物の明渡しを実現する方法として、建物明渡請求訴訟の提起や建物を競落した際の引渡命令以外にも明渡しの断行の仮処分などの方法をとることができます。
しかし、これらの法的手段をとるためには、相手方を特定する必要があります。これは、判決が出されたことによる明渡しの強制執行は、債務名義に記載されている者に対してしか行うことができないのです。
つまり執行を着手することができたとしても、債務名義の者とは違う第三者が占有をしていた場合、その第三者が「占有補助者」という独立した占有はされておらず、債務名義の者の手足としての占有にとどまる場合でない限り、執行はできないとされ、明渡しを求めることは不可能となるため、再度本物の占有者を相手として、訴訟を起こす必要があります。

2.占有移転禁止の仮処分

占有者が債務名義の者と違うなどの事態を回避するためにも、明け渡し訴訟の相手方となる占有者をあらかじめ確定させておくための手続を「占有移転禁止の仮処分」といいます。
占有移転禁止の仮処分によって、占有者の特定ができたときには、その後に占有者が代わることがあっても、占有者を無視して明渡し手続を行うことが可能となります(当事者恒定効という)。

3.相手方を特定するには

占有移転禁止の仮処分の相手方を特定する必要がありますが、暴力団事務所として建物が使用されているのであれば、暴力団組長を相手方にすることで十分だといえます。これは、組事務所に出入りする組員は通常、暴力団組長の占有補助者と認定されるからです。

しかし、本事例のように組事務所として使用しているのではなく、組員が入れ替わりで建物を占拠している場合であると、暴力団組長を相手とするだけでは、不十分であると思われます。このような場合の対応策としては、建物所在地の住民票、もしくは看板または表札がある場合はこれを参考にして商業登記簿謄本、不動産登記簿謄本等を調べることになります。さらに、停車している車の登録番号や郵便受けの宛名などからできるだけ占有者を特定するための情報を得ることが重要です。

なお、建物の電気や電話などのライフラインから名義人の調査を行うことについては、競売手続であれば執行官から情報を得るという手段もありますが、弁護士会の照会等においては、プライバシーに関わることを理由として、情報を得ることは困難であると思われます。

4.相手方の特定が困難な場合

調査をしたにもかかわらず、占有者が特定できないこともありますが、占有者が分からなければ保全処分の申立てをすることが困難であれば、占有屋などによる執行妨害を許してしまうことになるので、平成15年の法改正によって、民事執行法上、相手方を特定せずに行える保全処分の制度が認められるようになり(民事執行法55条の2第1項)、民事保全法上においても債務者を特定せず行える占有移転禁止の仮処分の制度が設けられました(民事保全法25条の2)。

5.相手方を特定しないで発する保全処分が認められる場合

保全処分が認められるためには、①執行官保管命令または占有移転禁止の仮処分を発することができる場合であり、②相手方を特定することを困難とする特別の事情がある場合に認められることになります。
相手方を特定することが困難である事情としては、

6.相手方を特定しない保全処分の執行

この決定における執行は裁判所の執行官によって行われるため、執行官が執行場所に出向き、直接占有者の特定または排除を行うことになります。
執行官が占有者を特定する方法としては、占有者に対して質問をしたり、外形的な黴表(表札、看板、郵便の宛名等)から、または管理人や近隣者への聞き込みなどがあります。

ただし、執行現場に赴き、執行官自らがこのような調査を行ったにもかかわらず、占有者を特定するに至らなかった場合には、保全処分の執行を行うことはできない(執行不能)という点に注意が必要です。なので、申立てを行う際には、しっかり占有者に関する調査を行うとともに、申立時にはあらかじめ執行官と十分な協議をしておくことが重要です。

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