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組長責任

暴力団員の行為によって被害を受けた場合、その暴力団の組長に損害賠償ができる場合があるそうですが、どのような場合にできるのでしょうか。

1.抗争型とシノギ型

暴力団から被害を受けた場合、直接的な加害者である暴力団員個人に対して、不法行為責任による損害賠償を請求することも可能ではありますが、直接の加害者が末端組員であった場合、たいていの人は資力がなく、また実行犯が服役していることや勤務先がないことが多く、たとえ勝訴判決をもらえたとしても、加害者に支払能力がないため、泣き寝入りや請求自体を断念せざるを得ないことがあります。

暴力団抗争による発砲事件において、一般市民が巻き添えにあい、誤って射殺されるという事件は以前からありました。近年では、このような暴力団抗争に巻き込まれた被害者が、発砲した暴力団員が所属している暴力団の組長や広域暴力団のトップにいる組長を民法715条に基づき、使用者責任を根拠として、訴える訴訟が各地で起きています。

また、抗争による殺傷被害だけにとどまらず、暴力団の資金獲得活動として組員が恐喝などを行う、いわゆる「ヤクザのシノギ」の場合、恐喝などにあった被害者が末端組員と所属する組の組長に対する損害賠償請求を行うこともあります。
このような抗争被害はタイプに分けることができ、前者のタイプを抗争型、後者のタイプをシノギ型といいます。

2.組長という場合に、どのレベルの組長に責任を追及するか

暴力団員は、通常、広域暴力団のトップと直接的な親分子分の関係であることは少なく、広域暴力団の中で2次団体、3次団体、4次団体というようにピラミット化されており、傘下組織の組長と盃を交わすという連鎖によって成り立っていることがほとんどです。
このような場合、被害者は、暴力団員が直接所属する組の組長の責任を追及する場合と、広域暴力団のトップの組長の責任を追及する場合が考えられます。直接所属している組の組長に対して組員の不法行為について直接の監督責任が認められることは多いですが、傘下組織の組長であると、無資力であることが多いため、被害者の救済という面では限界があるといえます。広域暴力団の組長に対する責任が認められれば、賠償が履行される可能性も高いですが、広域暴力団の組長の関与については、間接的で薄いとみなされる可能性もあり、監督責任としての使用者責任を問えるかは、裁判上で争われていました。

3.判例の傾向

暴力団被害の抗争型について、平成16年の最高裁で広域暴力団の組長に対する使用者責任を肯定する判決が出ました。

肯定されるきっかけとなった事案及び結果

暴力団同士の抗争の初期段階で、警戒警備中の警察官がY組の傘下団体の組員に誤って射殺されました。
最高裁ではこの発砲行為が最上部団体である広域暴力団Y組の威力、威信を維持回復するための対立抗争行為として行われた行為であり、Y組の事業の施行と密接に関連する行為にあるとして、Y組組長に対して使用責任に基づく損害賠償責任を認めました。

これにより、指定暴力団の抗争では、民法715条における責任根拠としての事業関連性があり、傘下組織の組員による抗争の中での殺傷行為においても広域暴力団トップの管理監督責任が及ぶものであるということが認められたことになります。
なお、この事案における最高裁判決の下級審では、直接的な暴力団員が直接所属する傘下組織の組長に対して、民法719条によって共同不法行為責任が認められています。

この事案以降の判決では、抗争によるものではないですが、広域暴力団の4次団体の組員が拉致及び殺害されたことに対する報復として、殺害実行犯であるとされた外国人留学生を射殺した事案において、平成19年9月20日に出された東京地方裁判所での判決では、この報復行為は組のメンツを維持するためであるという組活動との事業関連性を認め、広域暴力団の組長に対し、使用者責任による損害賠償が認められました。

また、シノギ型についてのものとしては、埼玉県の居酒屋で広域暴力団傘下組織の組員に因縁をつけられた流しの活動をしていた演歌歌手が暴行および殺害された事件が起こり、これについて東京高等裁判所では、平成14年11月27日の判決で加害者である組員が所属する傘下組織の組長および組長代行に対して使用者責任による損害賠償が認められたものがあります。(この事案では、広域暴力団の組長に対する訴えはありませんでした。)

4.どんな場合に責任が認められるのか

組員の行為の全てに対して、直属の組長または広域暴力団組長の使用者責任などによる不法行為責任が必ずしも認められるというわけではありません。

認められない典型的なケースとしては、組活動とは関係のない機会での交通事故や個人的なケンカによる死傷など、組活動とは全く無関係な組員個人の行為によるものです。
組員が組の活動に関連した不法行為を起こしたわけではなく、また組の威力の維持拡大に関連したものではない場合、組長に対する責任追及は困難であるといえます。

実際の訴訟では、広域暴力団側から「傘下団体が勝手に起こしたことであり、上部団体には関係がない」という反論があり、「とかげのしっぽ切り」というような主張がしばしばあります。
また、裁判所が傘下団体の組活動に止まると判断すれば、傘下団体の組長に対しての責任は問えますが、広域暴力団のトップに対する責任までは問えないことがあります。

しかし、抗争型の場合、他団体の抗争やもめ事の多くは、傘下組織だけでなく、その組織が所属する広域暴力団の威力やメンツの維持に関連したものであると認められることも多々あると思われます。

一方で、資金獲得活動における暴力団被害(いわゆるシノギ型)では、暴力団員による恐喝などの不法行為などが行われた際に、広域暴力団の威力を利用し、不法行為を行ったということが認められるかがポイントとなります。

シノギ型では、広域暴力団の威力を利用しているかが議論となるケースもありますが、実際、被害の多くは、組員が直接所属している傘下組織よりも広域暴力団に所属していること自体に怖ろしく感じ、恐喝に応じていることがあり、この場合、広域暴力団の威力を利用している恐喝であると思われることも少なくはありません。
平成16年の最高裁判決では、広域暴力団の資金獲得活動を事業であると認め、資金獲得活動には不可欠である縄張りや威力・威信の維持のために暴力行為を事業密接関連行為としているため、シノギ型での使用者責任も肯定しているものであるといえます。

5.暴力団対策法の改正による責任追及の容易化

暴力団対策法が平成16年に改正されたことにより、新たに暴力団対策法15条の2が新設されることとなりました。
この条項では、指定暴力団員が他の指定暴力団との対立や指定暴力団内部の対立において、凶器などを使用した暴力行為を行い、他人の生命および身体または財産を侵害した場合には、指定暴力団の代表者が、被害者に対して損害賠償を負うということが定められました。

平成20年には、指定暴力団員が指定暴力団の威力を利用して資金獲得行為を行い、その行為によって、他人の生命および身体または財産を侵害することがあれば、原則的に、被害者に対して、損害賠償義務を負うという内容の法改正が見込まれています。

上記の法改正が行われれば、抗争型被害およびシノギ型被害のどちらに対しても、指定暴力団組長に対する責任追及が認められやすくなると考えられます。

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