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民暴と組織犯罪処罰法

組織犯罪処罰法という法律ができたそうですが、民暴対策に活用できますか。

1.組織犯罪処罰法の内容

平成12年2月1日に「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規則等に関する法律(組織犯罪処罰法)」が施行されました。これは暴力団やオウムなど、組織によって実行された犯罪における特則を定めたものになります。
この法律が制定された背景には、以前は犯罪行為とは個人が行うものであるという考えが前提としてありましたが、近年の犯罪行為は反社会的な組織が組織上部からの命令の下、犯罪が行われるという事件が多発しており、これによる被害が深刻化してきたことにあります。

組織犯罪の場合、実際に犯罪を起こす実行者の多くは組織の末端にいる者であり、たとえ実行者を逮捕し、処罰したところで犯罪組織全体にダメージを与えることはできませんでした。
その上、実行犯が犯罪行為によって得た不当な収益は、組織内で隠匿および蓄積されることや、組織によって行われている副事業で運営されるなど、経済的にも犯罪組織が強大な権力を持つという状況が生まれつつありました。国際的にも同様の状況となりつつあり、世界的にみても、組織犯罪対策において日本が対応に遅れていることは明らかであるといえます。

このようなことから、一定の犯罪について、①一般の法律で処罰する場合と比べて刑を加重(罰金も懲役もおおむね5割増し)、②実行行為を行った者またはその所属する団体が所有する犯罪を組成する物(覚醒剤取締法違反における覚醒剤など)、犯罪の用に供したもの(殺人罪における拳銃など)、犯罪による収益、などの没収(これまでは有体物しか没収できませんでしたが、債権も没収可)、③没収すべき物の事前の保全処分、④金融機関に対する疑わしい取引(麻薬取引やマネーロンダリングが疑われる)の届出を義務付けるなどの規定が定められました。

2.重要な改正―没収・追徴された犯罪収益を被害者に分配

組織犯罪処罰法は、施行後何度か改正を行っています。その中でも最も重要とされているのは、平成18年6月に改正が行われたものになります。
この改正を行うきっかけとなったのは、山口組旧五菱会系のヤミ金融グループによって行われたマネーロンダリング(資金洗浄)事件で、このグループの最高責任者が組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)等の罪に問われ、有罪判決を受けたことになります。この事件の第一審では、組織犯罪処罰法旧13条2項の規定に基づき、犯罪被害財産(刑法の恐喝などによる財産犯罪によって、犯罪被害者から得た財産またはその保有または処分によって得た財産)に関しては、犯罪の被害者に対して返還する必要があることから、原則として国が没収および追徴をすることはできないという判決が下されました。
しかし、犯罪被害者の中には、自身の借り先がこのようなグループに属していることを知らない、もしくは知っていたとしても、後に問題となることをおそれ、権利行使に踏み切れないという者も多々存在し、また旧組織犯罪処罰法では、国内における犯罪収益に関しては没収が可能である一方で、海外に送金された犯罪収益については没収ができないと定められていました。このような規定があることによって、この事件による犯罪収益は、ヤミ金グループの手元に残されたままという不合理さが問題視されました。
このような不合理に対する批判に応えるように、控訴審では、柔軟な解釈論によって、追徴が命じられることとなりました。

このような経緯を経て、組織犯罪処罰法では、犯罪被害財産についても没収追徴できるように改正され、さらに別途でスイスとの間に相互主義による没収金の分配についての協定が成立されたことにより、スイスが没収した預金について日本が分配を受けることが可能となりました。

3.さらなる改正と犯罪被害者給付金支給法等の制定

組織犯罪処罰法の改正に伴い、犯罪被害者給付金支給法が制定・施行されました。
この法律では、犯罪被害者は特に訴訟を起こすこともなく、被害回復事務管理人(弁護士)に対し、犯罪被害についての申請をして裁定を受けることにより、没収および追徴された犯罪収益被害額に応じて、各人に給付金が支給されるという制度になります。

これらの改正が行われたことにより、犯罪被害者は被害回復を受けやすい体制が整えられたと同時に、暴力団員等の組織犯罪者に対し、没収および追徴を対象とする機会および範囲が広くなったため、犯罪収益に対する剥奪が容易に行えることになりました。

また、組織犯罪処罰法との直接的な関係はありませんが、平成19年には、銀行振り込みなどの方法により被害を被った者に対して、組織犯罪処罰法違反の罪により、没収および追徴された犯罪収益の分配だけではなく、その他の犯罪や有罪判決としての対象からは除外されていた犯罪被害(とみられる)預金に関しても、簡便に分配を受けることができるようになる「振り込め詐欺被害者救済法」が制定されました。

さらに、平成20年3月には、「犯罪による収益の移転防止に関する法律(=犯罪収益移転防止法)」が施行され、これまでは組織犯罪処罰法に規定されていた金融機関の疑わしい取引の届出義務等の適用範囲を拡大したことによって、新たにファイナンスリース事業者、クレジットカード事業者、宅地建物取引業者、宝石・貴金属等取扱事業者、電話受付代行業者などに対しても、顧客に対する本人確認義務や疑わしい取引に対する届出義務が課せられることになりました。

4.実際の活用例
(1)みかじめ料の例

「大分県内の山口組系の下部団体の幹部が、大分市内の風俗店経営者がみかじめ料を滞納したことから、平成12年7月中旬ころ、大分市内において同人に対し、『店ができんごとなるぞ。つぶるるぞ』等と脅して、多数回にわたり、現金36万円の交付を受けて、これを喝取した。」

(2)労働者派遣業法違反の例

「平成12年、秋田県内の山口組系組織の代表者が、雇用する労働者12名を労働者派遣契約に基づいて、秋田県内の建設会社に派遣し、労働者派遣ができない業務について、労働者派遣事業を行った。」

(3)犯罪収益隠匿の例

「平成13年、無登録で賃金業を営んだ弘前市の暴力団員が賃金業法違反で起訴されたが、法外な金利で荒稼ぎした金を他人名義の預金口座に入れて隠匿したとして、組織的犯罪処罰法違反でも追起訴した。」

上記3つのケースに関しては、いずれの場合も通常より5割程度重い刑が科せられると考えられます。
また、(3)のケースでは、犯罪収益が預金されていたことから、預金の処分等を禁止する起訴前の没収保全命令が出されました。

(4)犯罪収益収受の例

「平成14年八王子市発注の水道管敷設工事での談合の噂を聞きつけた稲川会系暴力団の幹部が、市内業者団体の世話役を呼び付けて脅迫し、12業者から合計1,200万円を脅し取り、自らが主宰する団体に不正利益を得させた」

以上のことから、みかじめ料の恐喝や労働者派遣業法違反、賃金業とマネーロンダリングなど、暴力団や事件屋が犯しがちな民事絡みの犯罪において、「組織的に」行われているような場合であれば、一般的な刑法と比べて有効なものであるといえます。
特に、マネーロンダリングについての処罰や没収の強化など、犯罪収益を残させないという点においては、これまでの刑法と比べるとより強力になったといえます。

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