危機管理マニュアル

危機管理マニュアルの概要

4.危機管理マニュアルの概要

危機管理マニュアルは、危機管理検討チームによる危機管理の検討の結果を明文化したものですが、その中で定めるべき項目として以下の5項目の内容を紹介します。
なお、ここで取り上げた項目はあくまで「必要最低限」定めるべき項目であって、対象となる企業の業種、規模、事業形態、業務プロセス、取引環境、市場動向などによって、項目を追加しなければならない場合もあります。そのため、マニュアル作成にあたっては、経験豊富な当所の弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

項  目内  容
基本方針「不祥事等」の特定、基本方針、目的、行動指針
対応体制緊急対策本部の組織図、役割分担、緊急連絡網
不祥事等の発生直後の緊急アクションアクションリスト、チェックリスト
社内アクション不祥事等ごとのアクション項目
社外アクション不祥事等ごとのアクション項目

(1)基本方針

  1. 危機管理マニュアルの対象とする「不祥事等」を特定し、読み手である役員・従業員に対し、
    マニュアルの射程範囲を明確にします。
    なお、「不祥事等」の特定にあたっては、可能な範囲で具体化して、役員・従業員に『有事』を理解・認識しやすくするといった工夫したほうがよいでしょう。
  2. 企業としての不祥事等に対する基本方針、基本姿勢をしっかり示したうえで、危機管理マニュアルの目的、有事の際の役員・従業員の行動指針を明確にします。

(2)対応体制

  1. 有事の際に設置される緊急対策本部の組織図を明確にし、有事の際に逸早い対応、組織の設置を可能とします。
    緊急対策本部を構成する部門を検討するにあたって、特定の一部部門のみを危機管理担当と定めてしまうと、往々にして他の部門が危機管理に対し一切無関心となり、有事対応するにあたって大きな障害となる可能性があります。
    企業として組織的に有事対応をするためにも、できるだけ社内の様々な部門を関与させ、巻き込んでいく必要があります。
    また、緊急対策本部を設置した後、対策本部に属さない役員の中には、自ら担当する業務が緊急対策本部の業務と重なるとき、その判断や指示に口を挟もうとする場合がありますが、それは慎まなければなりません。
    緊急対策本部の権限は、迅速な対応を可能とするため、通常ラインの業務権限に優先させねばなりません。もし、口を挟もうとする役員が危機管理を遂行するに当たって必要なのであれば、その役員も緊急対策本部の一員に加える方が望ましいです。
  2. 緊急対策本部 組織図 例

    緊急対策本部 組織図 例
  3. 緊急対策本部の各関連部門の役割分担を明確にします。事前に役割分担を明確にすることで、各関連部門による当事者意識をもった迅速な行動が期待できます。
    本部スタッフにおいては、情報調査業務、危機広報業務、顧客対応業務、財務業務などの担当部門の者がそれぞれ該当業務を担当することになり、事務局スタッフはこれをサポートすることになります。
  4. 役割分担表 例

    対策事項主担当部門主な役割
    情報調査業務総務部社内情報の収集、一括管理、ポジションペーパーの作成
    渉外業務総務部所轄官公庁・業界・証券取引所・取引銀行等への連絡、調整
    危機広報業務広報部プレスリリース、(緊急)記者会見
    顧客対応業務お客様相談部顧客・ユーザー・被害者への対応
    財務業務財務部財務処理
  5. 緊急対策本部内の緊急連絡名簿を作成し、緊急会議を行う必要があるときなどに利用し、緊急事態が発生しても随時対応できる体制を構築します。
  6. 緊急連絡名簿 例

    氏名自宅電話番号携帯電話番号住所通勤時間
         
         
         
         

(3)不祥事等の発生直後の緊急アクション

不祥事等の発生直後の初期対応として、急ぎ状況把握等を行わねばならないため、緊急アクションが要求されます。そこで、緊急対応アクションリストと、状況チェックリストを事前に作成することで、社内が慌てている中でも迅速かつ漏れなく緊急アクションを行うことが可能となります。

緊急対応アクションリスト 例

ステップアクション内容
STEP 1状況把握
事態の種別/発生時間・発生場所/被害の状況(人的・物的・金額)/障害の状況/応急措置の状況(復旧の見込み)/社会的影響
※情報は予め定めた担当部門のスタッフにて集約し一括管理
STEP 2顧客・社員の生命・安全の確保
STEP 3統括部署への報告
STEP 4証拠物件・事故現場の保全
STEP 5業務の正常復帰に向けた行動

チェックリスト 例

【チェックリスト 例】

(4)社内アクション

不祥事等ごとに緊急アクション後に求められる社内アクションを列挙し、各アクションの内容・ポイントなどを記述しておくと、緊急アクション後に速やかに次の対応に移ることができます。

社内アクションとしては、例えば、以下に列記するものが考えられます。

(5)社外アクション

(4)と同様に、不祥事等ごとに緊急アクション後に求められる社外アクションを列挙し、各アクションの内容・ポイントなどを記述します。
社外アクションとしては、例えば、以下に列記するものが考えられます。

5.危機管理マニュアル作成におけるポイント・留意点

(1)一般論ではなく、現場の行動指針となるものにする

「事件は現場で起きています。」
そのため、現場で利用できない抽象的な内容のマニュアルでは、行動指針になりえず、意味がありません。
つまり、現場目線で必要な事項をマニュアルに盛り込むことが重要であり、マニュアル原案は、現場での手直しが必須となります。

(2)自社の過去事例、業界・同業他社の事例を収集・分析する

マニュアルが対象とする不祥事等とは、将来発生しうる危機的状況であり、予測だけで、網羅的に不祥事等を抽出するのは、現実的に不可能です。
したがって、自社の過去事例、同業他社の事例、新聞・ニュースなどで取り上げられた不祥事などを収集・分析し、発生確率が高い不祥事等を抽出し、その抽出した特定の不祥事等を想定した対応に絞り込む必要があります。

(3)他社のマニュアルを模倣しない

企業の業種、規模、事業形態、業務プロセス、取引環境などによって想定すべき不祥事等や対応方法などに差異が生じることから、他社のマニュアルをそのまま模倣すると、有事の際にそのマニュアルが機能しないおそれがあります。
したがって、安易に模倣せずに、自社の事情に合わせたオリジナルのマニュアルを作成するように心がけてください。

(4)専門用語、難解な表現を避け、図、リスト、写真を多用する

専門用語や難解な表現では、現場の従業員が十分に理解できない可能性があります。
そのため、マニュアルで使用する用語や表現は誰でも理解できるものとし、図、リスト、イラスト、写真などを多用して現場の従業員の理解度を効果的に高めるよう工夫してください。

(5)細かな注意ポイントについては、各部門において個別のマニュアルを作成する

各役割分担された担当業務の細かな注意ポイント・現場ノウハウは、明文化すべきでありますが、それは危機管理マニュアルそのものに記載するのではなく、各部門に権限移譲して別途作成させた個別のマニュアルにて記載します。
危機管理マニュアルに細かなポイント・現場ノウハウを全て記載すると、マニュアルの分量が膨大となり、読みづらくなるからです。
なお、緊急記者会見の対応ポイントや取材対応ポイントについては、広報部に取り纏めさせるマニュアルにて記載します。

(6)マニュアル作成後にフォローを行う

マニュアルは完成すればそれで終わりではなく、危機管理の取り組みの形骸化を防ぎ、また危機管理を機能させるために、配布時に研修会を開催して、役員・従業員の理解度を高めることが必要です。
また、定期的に研修会やEラーニングを使った継続的学習を行うことにより、理解度の維持に努めて下さい。
そして、作成後にマニュアルにない新たな不祥事等が発生した場合は、マニュアルにフィードバックし、内容の見直しを行います。

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