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    [CATEGORY]:対マスコミ危機管理

例外的に実名を避ける事案[POSTED]:2018-07-20

(1)少年事件

ア 少年事件の報道の原則

少年事件は原則として、匿名での報道とされています。

少年法61条では、「家庭裁判所の審判に付された少年(※1)又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物(※2)に掲載してはならない。」と定められています。

少年法61条に反した場合であっても、罰則は設けられていません。
しかし、憲法で保障された表現の自由を、法律で制限する規定は極めてまれでその意味は重いとされます。
日本新聞協会の「少年法61条の取扱い」(1958年)は、少年の氏名、写真などは紙面に掲載すべきでないとの原則を掲げています。

※1 審判前については規定されていませんが、報道機関は規定の趣旨を尊重し、逮捕や補導など最初の時点から匿名報道としています。

※2 「新聞紙その他の出版物」との規定となっておりますが、既定の趣旨を尊要して、テレビ報道についても自主的に控えられているようです。

イ 少年報道が特別慎重に扱われる理由

少年は成人に比べて未成熟な存在であり、可塑性(少年の持つ、自分の起こした行為の問題点を反省して立ち直っていける柔軟さ)に富んでいると考えられ、教育や環境次第で立ち直れる可能性はより高いとされます。
少年法が少年の保護・更生を目的としているのも、その認識に基づきます。
少年の将来の社会復帰のための支障をなるべく小さくするために、取材方法や記事の表現については慎重な姿勢が求められます。
少年事件の場合、事件の背景や動機を深く探っていけばいくほど、少年やその家族、友人・知人らのプライバシーに大きく踏み込んでいかざるをえません。
記事では少年を匿名にしていても、取材を通して地域の住民に少年の名が結果として広まってしまうケースもあります。他方、取材上のリスクとして、少年の特定をあいまいにしていることで、取材する側と取材を受ける側が別人を想定しながら情報のやり取りをしてしまうことも考えられます。
少年事件の報道については、以下のようなルールが定められています(朝日新聞社の指針)。

     
  • ①犯罪少年・触法少年は匿名とする。発覚時に成年に達していたときや、司法手続の過程で成人に達した場合も同様に扱う。ただし、歴史的重大事件や、逃走中で再び重大犯罪を起こす恐れが強いときは、特例として実名で報じることを検討する。
  •  
  • ②少年事件の関係者の住所や発生場所は、少年の特定につながらないよう配慮して表記する。原則として、政令指定市では区名、市部は市名、町村部は郡名までとし、「県東部」などと地域で表現することも検討する。学校がからむ場合、学校を匿名とするかどうかは、事件の社会性や学校側の責任の程度などによって判断する。
  •  
  • ③18歳以上の少年の犯罪で死刑が確定する場合には、その段階から被告(死刑囚)を実名に切り替える。必要が応じて、匿名から実名にした「おことわり」を添える。

ウ 例外的に実名で報道する場合

事件の重大性や社会的な関心の高さにより、例外的に実名報道がなされる場合があります。また、当該少年が18歳に達しているかどうかも判断材料の一つとなります。

日本新聞協会の「少年法61条の取扱い」(1958年)では、
①逃走中で、放火や殺人などの凶悪な犯罪を重ねるおそれが強い場合
②指名手配中の容疑者捜査に協力する場合など、少年保護よりも社会的利益の擁護が強く優先する特殊な場
については、少年の実名、写真の掲載を認めるとします。

【実名報道の例】
     
  •  逃走中で、凶悪犯罪を重ねるおそれが強い場合事件の重大性・緊急性から、社会的利益が少年保護の要請に勝るとされます。
  •  
  •  公開捜査の場合指名手配中の容疑者捜査に協力する場合など、少年保護よりも社会的利益の擁護が強く優先する場合には、実名報道がなされます。捜査機関は少年法の精神を尊重し、容疑者の公開捜査は原則成人に限っています。しかし、警察庁は2003年に「少年自身の保護と社会的利益との均衡、捜査の必要性等の諸要素を総合的に勘案してその要否を判断し、必要かつ適切と認められる場合には、例外的にこれを行うことが許される」との通達を出し、容疑者が少年か、その可能性のある事件での公開捜査がありうることを明文化しました。その例として、「犯した罪が凶悪であってその手段、方法が特に悪質で再び犯罪を行うおそれが高く、社会的にも大きな不安を与えており、捜査上他にとるべき方法がない場合」を挙げています。
  •  
  •  未成年の芸能人による事件社会的な関心の高さ・影響力の大きさから、芸能人については実名報道とされます。
  •  
  •  親が政治家・芸能人等の場合少年犯罪の場合、なぜ事件が起こってしまったか、その経緯等を考えるうえで成育環境・家庭環境は重大な要素となります。親が政治家・芸能人等公的な存在であれば、子供の育ち方や育て方も社会の正当な関心事となりえます。

芸能人等である親について実名報道するかどうかは、このような事情や社会の関心とのバランスを検討し、事件の性質、親のかかわりの程度などを慎重に見極めて判断すべきでしょう。
親が記者会見をした場合は、基本的に親については実名報道がなされます。

エ 少年審判の内容と報道

少年法により審判は非公開とされています。そのため、長い間審判内容は被害者にさえ知らされませんでした。
しかし、少年による凶悪事件の発生や公表すべきであるとする世論の高まりにこたえ、1990年代半ばごろから、家庭裁判所が審判の日程や決定の内容について、一部は事実上の公開をするようにかわりました。
公表される決定要旨には、犯行状況や事件にいたる経緯のほか少年の発育歴、家庭環境、学校での行動も友人関係、成績などが記載されます。場合によっては、精神病理学的知見などさらに踏み込んだ記載がなされているケースも存在します。

オ 少年の死刑判決時と報道

犯行当時18歳以上の少年の死刑が確定する場合には、原則として、確定時点から実名報道となります。少年事件を報道とする最大の理由である「本人の更生・社会復帰」への配慮の必要がなくなるからです。
権力行使の監視という意味でも、国家が合法的に人の命を奪う死刑が誰に対してなされるか、社会に明らかにされるべきだといえます。

カ 実名報道に対する損害賠償請求

①神戸市須磨区児童殺害事件
【事件の概要】

1997年に兵庫県神戸市須磨区で発生した当時14歳の中学生による連続殺傷事件。少年が名乗った名前から「酒鬼薔薇聖斗事件」とも呼ばれる。
数か月に亘り、複数の小学生が被害を受け、2名が死亡し、3名が重軽傷を負った。

【報道について】
週刊誌「フォーカス」が少年の顔写真を掲載したところ、法務省が人権侵害を理由に回収等を勧告した。

②堺市通り魔殺人事件
【事件の概要】

1998年1月 大阪府堺市において、文化包丁をもった少年が、登校途中の女子高生を刺して重傷を負わせた後、幼稚園の送迎バスを待っていた母子らを襲い、逃げようとして転倒した5歳の幼女に馬乗りになって背中を突き刺して殺害し、さらに娘を守ろうとしておおいかぶさった母親の背中にも包丁を突き立て重傷を負わせた事件。
容疑者として現行犯逮捕されたのは、当時19歳の少年で、シンナー吸引中に幻覚に支配された状態で犯行に及んだものといわれています。

【報道について】

月刊誌「新潮45」は、「ルポルタージュ『幼稚園児』虐殺犯人の起臥」と題する記事を掲載し、そのなかで原告の実名を使用し、その顔写真を掲載。
原告は、発行元の新潮社、「新潮45」の編集者、ルポルタージュの執筆者を被告として、損害賠償等を求める訴訟を提起。
第1審判決(大阪地方裁判所平成11年6月9日)は、原告の主張をほぼ認める判断をしました。制裁的慰謝料の請求と謝罪広告の請求こそ認めませんでしたが、慰謝料200万、弁護士費用50万合わせて250万円の損害賠償を命じました。
控訴審(大阪高等裁判所平成12年2月29日)は、少年法61条の存在を尊重しつつも、表現行為が社会の正当な関心事であり、かつその表現内容・方法が不当なものでない場合には、その表現行為は違法性を欠き、違法なプライバシー権等の侵害とはならないと判断。
原告側が最高裁判所に上告したが、その後取り下げ。

③長良川リンチ殺人事件
【事件の概要】

大阪事件:1994年、当時18歳であった原告の少年は、当時19歳の別の少年とともに、大阪市の路上を通行中の青年にいいがかりをつけ、たまり場となっていたマンションの一室に連れ込み暴行を加え、殺害し、死体を毛布で包んでガムテープで固定し高知県安芸郡の山中に遺棄。
木曽川事件:原告は、愛知県稲沢市で、いずれも19歳の他の少年とともに青年に暴行を加え、愛知県木曽川祖父江緑地公園駐車場まで連れていってさらに暴行を加え、さらに尾西市の木曽川左岸堤防上で頭部等をカーボンパイプで殴打するなどの暴行を加えて瀕死の重傷を負わせたうえで河川敷にけ落とし、河川敷の雑木林内まで両手足をもってひきずって遺棄して立ち去り、その青年を死亡させて殺害した。
長良川事件:原告は、金品を奪うため、他の少年らと共謀のうえ、三人の青年を自動車に監禁して連れ回し、暴行を加え、そのうち二人については長良川右岸堤防東側河川敷において金属製パイプで頭部等を殴打して死亡させ、もうひとりについてはコンビニの駐車場に駐車中に金属製パイプで頭部等を殴打し頭部外傷等の傷害を与えた。

【報道について】

原告は、逮捕されて、木曽川事件では傷害・殺人、長良川事件では監禁・強盗致傷により名古屋地方裁判所に起訴され、後に大阪事件では、殺人・死体遺棄により大阪地方裁判所に起訴された。
大阪事件が名古屋地方裁判所に移送され、名古屋地方裁判所で審理中であった。
これら一連の事件について、文藝春秋の発行する「週刊文春」は、被害者の親たちの無念さを訴える記事を掲載し、一連の連続強盗殺人事件の「犯人グループの主犯格K」と記載して、犯行の様子を報道(記事1)。
また「週刊文春」は、長良川事件の被害者の両親の思いと法廷の傍聴記等を掲載し、そのなかで「真淵忠良」という仮名を用いて、三人の被告人らの公判での様子や犯行の様子を報道した。そこには、「真淵忠良」の経歴や交友関係等について記述があった(記事2)。

原告は、文藝春秋社を相手取って損害賠償を求めて訴訟を提起。
第1審判決(名古屋地方裁判所平成11年6月30日)は少年の損害賠償を認容。
仮名を用いても本人であることを容易に推知することができるような記事の出版物への掲載は、その者の将来の更生の障害になるから、原則として違法であると判断。その者の保護、将来の更生の観点から事件を起こした本人と推知できるような記事を掲載されない利益よりも、明らかに社会的利益の擁護のほうが強く優先されるなどの特段の事情がない限り、許されないと判断。
本件の場合、仮名は用いられているが、本名と音が類似しており、原告の同一性は隠ぺいされておらず、さらに記事の経歴や交友関係などにより原告と面識のある不特定多数の読者はそれが原告のことであると用意に推知できるとした。社会的利益の擁護が強く優先される特段の事情もなしと判断。
本件記事の掲載は不法行為を構成するとして、慰謝料30万円の損害賠償を命じた
控訴審(名古屋高等裁判所)は以下のように判断。

記事1について
一般読者は仮名で表示されている「主犯格K」が原告を指すものだと認識することはできないとして、損害賠償請求を斥けた。

記事2について
原告と面識を有する特定多数の読者ならびに原告が生活基盤としてきた地域社会の不特定多数の読者は、仮名の「真淵忠良」が原告のことを指すことを容易に推知できるものと判断。
そこで、裁判所は、少年法61条に違反して実名等を報道すれば、当該少年に対する人権侵害行為として、ただちに民法709条により不法行為責任を負うと判断し、保護されるべき少年の権利ないし法的利益よりも、明らかに社会的利益を擁護する要請が強く優先されるべきであるなどの特段の事情が存する場合に限って違法性が阻却され、免責されるが、本件については特段の事情がないとして、被告の不法行為責任を認め、30万円の慰謝料支払いを命じた。
文藝春秋側が最高裁判所に上告。
最高裁判決(最高裁判所平成15年3月14日)では、被告(文藝春秋)敗訴部分破棄し、差し戻しとなった。
差し戻し判決(名古屋高等裁判所平成16年5月12日)は、原告の請求を棄却し文藝春秋勝訴が確定した。

(2)精神障害者の事件

ア 精神障害者についての報道の原則

精神障害者については、刑事事件の捜査段階や公判で、被疑者や被告人が心神喪失で「刑事責任能力」が全くないと判断されたとき(不起訴処分、無罪判決)、またはそう判断されることが確実なときは、本人を特定する名前、住所などは記載しません。
判断に際しては、精神鑑定の結果など科学的・客観的データや捜査内容の取材結果を総合的に検討して結論を出します。精神科への入通院歴がある場合でも、それだけで匿名の理由とはせず、あくまで刑事責任能力の有無を基準とします。
ただし、薬物中毒者が精神障害を起こし、被疑者(被告人)となった場合は実名もありえます。
また、容疑がきわめて凶悪で、逃走していたり、実名手配されていたりして、新たな犯罪が予想されるときや、社会的利益の擁護が強く優先するときも、実名を検討します。
朝日新聞社の指針によると、以下のような考えの下、報道がなされます。

  • ①逮捕された容疑者に精神障害があるか、またはその疑いがあり、刑事責任能力のない心神喪失者である場合は、匿名を原則とします。当初は実名でも、取材の過程や司法の判断で、刑事責任が問えない可能性が高くなったら匿名に切り替えます。逆の場合もあります。
  • ②精神障害者イコール心神喪失者ではありません。心神喪失かどうかは障害の程度や病名、治療時期、捜査当局の見方や供述内容などを踏まえて総合的に判断します。重大事件の場合は、捜査当局が刑事責任を問えるかどうか微妙であっても実名とします。重大事件でない場合は、刑事責任が微妙なときは匿名が原則。歴史的重大事件では、刑事責任が問えない可能性があっても実名を記し、顔写真を掲載することがあります。
  • ③匿名の場合、「精神障害の疑いが強い」とせず、「刑事責任能力の有無を調べている」などと表現を工夫し、精神障害者一般への偏見を助長しないように配慮します。病状や病歴、入通院歴などは原則として報じません。事件の重大性などから判断して触れることも例外的にありえますが、症状や周囲の対応など事件に至る予兆や背景を併せて取材し報じるよう努めるべきとされます。
  • ④匿名の場合、「精神障害の疑いが強い」とせず、「刑事責任能力の有無を調べている」などと表現を工夫し、精神障害者一般への偏見を助長しないように配慮します。病状や病歴、入通院歴などは原則として報じません。事件の重大性などから判断して触れることも例外的にありえますが、症状や周囲の対応など事件に至る予兆や背景を併せて取材し報じるよう努めるべきとされます。

イ 実名か匿名かを分けるポイント

刑法39条は「心神喪失者の行為は罰しない。心神耗弱者の行為はその刑を減軽する」と規定しています。
心神喪失の例としては、精神障害や覚せい剤の使用によるもの、酩酊などが挙げられます。
犯行時に心神喪失だった者は刑事責任がないとして、起訴されたとしても無罪になります。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律では、精神障害者を、統合失調症、薬物中毒、知的障害、精神病質(人格障害等)、その他の精神疾患を有する者と規定します。ここでは、精神疾患(統合失調症や躁鬱病)、パーソナリティー障害(人格障害)を精神障害とし、薬物中毒、知的障害は分けて考えます。
心神喪失者であることが明らかになった場合には、社会的偏見による本人や家族の不利益を避け、本人が社会復帰した場合に配慮し、匿名で報じます。
精神障害者による犯罪で、実名にするか匿名にするかの判断の最大のポイントは、刑事責任を負う能力があるか否かの見極めです。

ウ 例外的に実名で報道する場合

刑事責任能力が欠如しているとみられる場合でも、実名報道に踏み切る場合もあります。
たとえば政治家などの公人・公的存在の場合、その言動や健康状態が社会全体の利益にかかわるため、例外的に実名で報道する場合があります。
また、殺人や放火、強盗などの凶悪事件を起こした精神障害者またはその疑いのある容疑者が、凶器を持ったまま逃げている場合には、被害の拡大を防ぐため、容疑者の実名報道や、場合によっては顔写真の掲載も検討する場合があります。政治テロや社会的衝撃が大きい「歴史的重大事件」の場合も、実名報道で精神障害者が受ける不利益よりも、国民の知る権利を優先させます。

エ 心神耗弱者について

心神耗弱とは、精神の障害等の事由により事の是非善悪を弁識する能力又はそれに従って行動する能力が著しく減退している状態をいいます。
心神喪失と異なり一応責任能力はあるとされますが、心神耗弱が認定されると必ず刑が減軽されます(必要的限定)。
心神喪失者よりは実名報道のハードルは低いものとされ、検察官が心神耗弱を理由に起訴猶予にした場合でも、事件にニュース性があると考えられるときは実名にします。
判決で心神耗弱を理由に減軽された場合も実名を維持します。

オ 家族が被害者である場合

精神障害者が自分の家族を殺した事件では、容疑者を匿名にした場合は被害者も匿名にします。

(3)別件逮捕

別件逮捕は、原則として匿名とし、本件逮捕に切り替わった時点で実名とします。
もっとも、別件逮捕の概念は法的に固まったものではないため、機械的な判断は避けるべきとされています。
本件に直接つながる場合や別件自体が重い容疑の場合は、本件とのかかわりの記述に慎重な配慮を尽くした上で実名とすることもあります。

(4)強制性交事件の一部

犯罪の重大性と実名報道の原則から、強姦事件の容疑者は実名で、被害者は匿名で、が原則です。
しかし、実父や義父が容疑者で、その娘が被害者となった事件の場合、住所や名字が同じ場合が多く、被害者の特定につながる恐れがあります。こうした事案では被害者保護のため、容疑者は匿名で報じます。
なお、報道にあたり、強制性交事件の場合は事件の凶悪性があいまいになるのを避けるため、「暴行」「乱暴」「レイプ」は使いません。なお、強制わいせつなどの性犯罪については、「体に触った」「わいせつ行為をした」などの表現を用いることとし、「いたずら」は使わないようにします。

(5)微罪・軽過失な事件や書類送検となった事件

単純な万引きなど、容疑内容と実名報道の不利益のバランスを考えて、匿名とする場合があります。
朝日新聞は1990年8月5日付朝刊の「読者と新聞 編集局から」の中で、「微罪・軽過失事件の容疑者や、ひったくりのような単純な一過性の事件の被害者など、実名を伝える必要性に比べて当事者に与える不利益や迷惑のほうが大きいと考えられるようなケースは、できるだけ匿名で報じることにしました」と記し、報道に関する考え方の基本としました。
書類送検に関する報道については、一般に匿名が妥当ですが、社会的責任の度合いによっては実名とします。
刑事事件を匿名で報じた後、容疑者が属する官庁などが実名で処分を発表した場合は、その時点で実名に切り替えるか否かを判断します。

(6)その他

報道関係者は社内ルールとして、刑事事件の被害者、周辺関係者、自殺者についての報道取り扱いルールも設けているようです。
上記基準は一般紙の例ですが、一般紙の中でも掲載基準は社によって異なり、日本経済新聞を除く全国紙4紙の中でも1紙だけは極めて緩く、次いで1紙が残りの2紙に比べてやや緩やかな基準で掲載しているといわれています。

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事件報道は実名が原則』のその他の記事

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                対応策
                会社や学校からの事情聴取に対しては、冤罪であるとの一点張りで通しつつ、検察官の取調べに対しては自白して素直な供述態度で臨み、反省を示すことによって不起訴処分を狙う方もいるようです。供述内容が一見矛盾しているようですが、通常検察官が取調べ状況について会社や学校へ情報開示することはありません。不起訴処分さえ取れれば、不起訴処分告知書を会社や学校に提出することによって解雇・退学処分を免れることは大いに考えられます。しかし事件の結末を見届ける前に処分を決めようとする会社・学校も多いので、必要なことを説明…...
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                  報道による被害
                  容疑者として報道されてしまった場合、会社や学校から事情を聞かれ、解雇・退学処分が濃厚となる場合が多いでしょう。特に示談をしていた場合には、罪を認めたと解釈されてしまうようです。 ...
                  [ マスコミ報道の基準 , 対マスコミ危機管理 , 報道されてしまったら ]
                    報道されにくい刑事事件
                    精神障害者の起こした刑事事件については報道されにくい傾向にあるようです。精神障害者については、心神喪失で「刑事責任能力」が全くないと判断され不起訴処分、無罪判決となる可能性がありますし、精神障害者や知的障害者による犯行と報道することで、障害者に対する偏見や差別を助長する恐れがあるからです。2001年4月30日に台東区の路上で、レッサーパンダの帽子をかぶった若い男が短大生を包丁で刺し、死亡させた事件については、世間に衝撃を与えた刑事事件であるにも拘わらず、報道が控えられました。事件直後には、レッサ…...
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                      1時間30,000円税別にて
                      電話相談に応じます。
                      1時間:
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                      電話:初回15分
                      メール:初回1往復
                      土日夜間:初回15分
                      無 料
                      対立当事者に弁護士が就いた事件
                      調停・裁判中、調停・裁判目前の事件
                      弁護士を替えることを検討中の事件
                      その他、紛争性がある事件
                      (潜在的なものも含めて)
                      非対応
                      来所ビデオ通話電話・メール・土日夜間
                      内容証明が届いた事件1時間:
                      12,000円(税別)
                      ※来所困難な方に限り、1時間30,000円(税別)にて電話相談に応じます。
                      電話:初回15分
                      メール:初回1往復
                      土日夜間:初回15分
                      無 料
                      対立当事者に弁護士が就いた事件
                      調停・裁判中、調停・裁判目前の事件
                      弁護士を替えることを検討中の事件
                      その他、紛争性がある事件
                      (潜在的なものも含めて)
                      非対応

                      ※お電話やメール、土日夜間の電話相談は、「内容証明が届いた」「対立当事者に弁護士が就いた」「調停・裁判中」「調停・裁判目前」「弁護士を替えることを検討中」など、紛争性が顕在化している危機管理事件に限定して、簡略なアドバイスを差し上げる限度で提供しています。メール相談電話相談または土日夜間の電話相談よりお問い合わせください。

                      ※一般的な法律知識については、お電話やメールでのお問い合わせを受け付けておりません。
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                      ※小さなお子様の同伴はご遠慮ください。