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経営幹部の民暴への対処法[POSTED]:2018-07-27

会社の経営幹部は、会社をめぐる民暴に対し、どのように対処したらよいのでしょうか。

1.蛇の目ミシン事件最高裁判決

経営幹部と民暴への対処について、重要な最高裁判例があります。
これは有名な事件で、自己の背後には暴力団がいると述べる「仕手筋」から、「大阪からヒットマンが二人来ている」などといって脅迫を受けた会社の取締役らが、仕手筋にいわれるまま、返還の見込みがない金300億円を交付してしまったというものです。
取締役らのこのような行為によって、会社は莫大な損害を被ることになりました(いわゆる「蛇の目ミシン事件」)。
このことに対して、会社の株主の一部からは、取締役らには善管注意義務違反が該当するとして、損害賠償を請求し、株主代表訴訟を提起したものが、この最高裁判決のもととなる裁判になります。
この事件における裁判では、地方裁判所による一審、高等裁判所による二審ともに、取締役らの行為に関しては、脅迫されたものによる行為であり、やむを得なかったなどとし、おり締まり役らに対する損害賠償責任は認められませんでした。
しかし、最高裁判所では、根本的に結論を覆し、原判決を破棄した上で、取締役らに対する損害賠償責任を肯定する内容の判決が下されました。
最高裁の見解は、取締役らが脅迫に応じたことに関しては、「警察に届け出るなどの適切な対応をすることが期待できないような状況にあったということはできないから」「理不尽な要求に従って約300億円という巨額の金員を」「交付することを提案しまたはこれに同意した」(取締役らの)「行為について、やむをえなかったものとして過失を否定することは、できないというべきである」という判示でした。
つまり、たとえ取締役が脅迫されたことによる行為であったとしても、会社に損害を与えてしまう結果になれば、個人的に賠償することが必要であると明言しました。
この判決は、会社経営陣に対して、厳しい判断を下すことになりました。

2.経営幹部による基本方針の重要性

会社、とくに一定以上の規模を有する企業ならば、収益も多額になると期待できるため、暴力団およびその他反社会的勢力の対象とされてしまう可能性が高いといえます。
さらに、蛇の目ミシン事件での最高裁判決のように、脅迫されたからことによる行為であっても、必ず許されるというわけではないので、反社会的勢力に対する資金提供や裏取引は、現状においては、きわめて厳しい批判や責任追及をされるということを認識しておく必要があります。つまり会社、とくに一定以上の規模を有する企業の経営幹部に関しては、暴力団やその他の反社会的勢力に対象とされる危険性に常にさらされていることになるので、どのような問題が生じるかを想定し、それに対する対処を備えておくことが重要であるといえます。
反社会的勢力に対する対策に関しては、これまで日本の主要企業によって構成される日本経済団体連合会の企業行動憲章の中で、経営幹部のあるべき方針が述べられていました。
つまり最新の企業行動憲章では、「市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力及び団体とは断固として対決する」という項目が挙げられ、同実行の手引きにおいては、細項目として「反社会的勢力を排除する基本方針を明確に打ち出す」「反社会的勢力による被害防止のために、全社をあげて法に則して対応する」「関係団体と連携し、反社会的勢力の排除に取り組む」と示されています。
また、この中では、経営トップが反社会的勢力に対して絶縁を宣言するというような経営幹部が断固たる意思を持ち、社会体制を確立することの必要性を強調しています。

さらに、平成19年6月には、政府犯罪対策閣僚会議によって、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表し、その中でも、「企業の倫理規定、行動規範、社内規則等に明文の根拠を設け、担当者や担当部署だけに任せるのではなく、代表取締役等の経営トップ以下、組織全体として対応する」といった経営幹部がとるべき対応の重要性が掲げられ、また反社会的勢力に対する資金提供や裏取引を行うことは絶対にしてはならないと強調されています。

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