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    [CATEGORY]:企業防衛の危機管理

STEP3 再発防止策 策定[POSTED]:2018-07-31

(1)再発防止案の策定

再発防止案の策定のポイント
  • (1)調査結果に基づくものであること
  • (2)牽制作用が働く再発防止策となっていること
  • (3)費用対効果を考えること
  • (4)弁護士によるリーガルレビュー
  • (5)関係者の厳正な処分

ア 調査結果に基づくものであること

調査チームから報告された原因調査の結果を分析したうえで、不祥事等の原因を除去し同様の問題発生を防ぐことのできる再発防止案を導き出す必要があります。再発防止案は、一般抽象的なものではあってはならず、できるだけ具体的なものでなければなりません。一般抽象的なもの(例えば「法令順守を徹底する」など)に終始してしまうと、その後、役員・従業員が現場にてとるべき措置、守るべきルールがわからず、結局、本来意図した効果を得ることができません。不祥事等の発生原因が構造的問題または組織ぐるみの場合は、確固とした再発防止策を講じて、ステークホルダーや世間が抱く「隠蔽体質」などの疑念を払拭することが不可欠です。

イ 牽制作用が働く再発防止策となっていること

いわゆる「他人の目」が働いている防止策であるということです。他人の目があれば、不祥事等を行う動機づけを弱め、不祥事等の発生リスクを少なくできます。
例えば、部門長の人事異動や取引先担当者の定期的な交代などは、後任者によるチェックを可能とし、牽制作用を働かせることができます。

ウ 費用対効果を考えること

いくら立派な内容でも、業務上実践できない、守れるはずがない再発防止策を作っても意味がありません。業務への影響を考慮して、いかに効率的に不祥事等の再発リスクに対処する方策を編み出すか知恵を絞る必要があります。

エ 弁護士によるリーガルレビュー

再発防止策案については、調査結果から原因除去し再発防止のために十分なものであるか、弁護士にリーガルレビューを依頼すべきです。
ただし、原因調査の調査結果の信頼性確保の観点から、原因調査に加わった弁護士以外の弁護士によるレビューとした方が望ましいです。

オ 関係者の厳正な処分

不祥事等に対し厳しい対処をすること自体が有効な再発防止策であることに留意する必要があります。
不正を行った従業員がきわめて軽い処分しかなされないのでは、いくら立派な再発防止策を講じても、他の従業員の心には響かず、不正をしてもその程度の処分にしかならないのかと思われてしまうかもしれません。逆に、厳正な姿勢で不正行為者に臨む姿勢を見せれば、不正が割に合わないことと実感するはずです。関係者の処分を検討するにあたっては、他の役員・従業員への影響まで念頭に置くことを忘れないでください必要があります。

(2)被害者対策案の策定

不祥事等による被害者が存在する場合は、その被害者への対応策についても検討し、策定することになります。
被害者対応としては、責任者による深謝、事実の説明、損害の拡大防止、治療の提供、金銭的補償、商品の回収修理、今後の対応の約束などが考えられますが、その対応方針を決定するにあたっては、法的な責任のみを果たすことに終始せず、「誠意をもった対応」をすることを心がけてください。
被害者に対する誠意をもった対応は、企業の信用回復に役立ち、結果として企業の将来の繁栄につながるからです。
損得勘定よりも、人間として何が正しいのかという基準を中心に据え、被害者対応を検討してください。
また、被害者対応にあたっては、その対応内容について被害者が問い合わせしやすいように、対応内容を世間に公表するのとは別に、各被害者に個別に手紙で通知する、問い合わせ窓口を設置するといった配慮も必要となります。

(3)社内関係者の処分・第三者への対応

ア 社内関係者の処分

不祥事等の問題を発生させた役員・従業員の責任追及については、社外的な意味と社内的な意味の二つがあります。
社外的な意味とは、関係者の処分が客観的に見て不適切または不十分である場合、経営者が善管注意義務違反による株主代表訴訟の対象となる可能性があるということです。
一方、社内的な意味とは、関係者に対しどのような処分を下すのかということは、企業が不祥事等をどのように受け止めているのかということを示すものとして非常に大きな関心事であり、その処分が適正・十分でなければ、他の従業員による再発リスクが生じるということです。
ただ、この責任追及は、不祥事等を発生させた役員・従業員個人に著しい不利益をもたらすものなので、当然、その役員・従業員からの処分への反論が予想されますが、企業は、それを覆すまたは凌駕する根拠をもって、頑固たる決断をする必要があります。

一般的な処分内容
ⅰ 懲戒解雇等の懲戒処分

懲戒処分とは、使用者が労働者に対し行う労働関係上の不利益措置のうち、企業秩序違反行為に対する制裁をいいます。懲戒処分の内容は、労基法91条の減給の制裁以外は法定されていないため、就業規則等の労働契約に基づき当事者間で自由に設けることが可能です。一般的には、就業規則に、譴責・戒告・減給・出勤停止・懲戒解雇といった懲戒処分の処分内容と、それぞれの処分ができる場合として懲戒事由を明記します。
懲戒処分を行うにあたっては、労働者の不利益の程度が大きいことから、懲戒事由に該当するだけでなく、その従業員の行為の性質・態様その他の事情に照らして、懲戒処分に処することについて客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である場合に限定されます。
にもかかわらず、そのような合理的理由や社会的相当性が認められない場合に懲戒処分に処すると、企業による懲戒権の濫用として懲戒が無効となります。

ⅱ 損害賠償請求等の民事上の責任追及

損害賠償請求
不祥事等の問題を発生させた役員・従業員が、その不祥事等について故意または過失により問題を生じさせ、企業に損害を与えた場合は、企業は、その役員・従業員に対し、その損害の賠償を請求することができます(民法709条)。

財産の仮差押
不祥事等の問題を発生させた役員・従業員から損害分の金銭を確実に回収するため、損害賠償請求訴訟の提起前に、その財産を仮差押しておくべきです(民事保全法20条)。なお、仮差押に際して、仮差押目的物の価格の15%から35%の担保金が必要となります。

ⅲ告訴による刑事上の責任追及

損害の程度、行為の悪質性などを考慮し、収集した不祥事等の証拠をもって、最寄りの警察署に相談した上で、告訴状を提出します。
例えば、取締役である役員が自分のために会社の金を使い込んだ特別背任罪(会社法960条)に該当するケース、経理担当の従業員が横領を行った業務上横領罪(刑法253条)に該当するケース、営業担当者が売上高の水増しのために循環取引を行った詐欺罪(刑法246条)等に該当するケースが考えられます。
告訴状は、企業が独自に作成して警察署等に提出するよりは、弁護士が作成する方が受理されやすい傾向にあるため、弁護士に相談して進める方がよいでしょう。

イ 特殊ケース毎の注意事項

ⅰモンスター従業員に対する懲戒処分

モンスター従業員に対する懲戒処分にあたっては、より慎重かつ冷静な対処が必要となります。職務懈怠の程度が軽微である場合は、懲戒処分として一発解雇とすると、その有効性について争い(調停・訴訟)となる場合が多く、仮に不当解雇と判断されると、解雇権の濫用として解雇そのものが無効となり、そのモンスター従業員をそのまま雇用し続けなければならなくなったり、賠償金を支払うことになったり、企業側にとって非常に受け入れがたい結果となってしまいます。懲戒解雇にあたっては、非常に慎重な対応が求められます。
例えば、(ⅰ)まずは、直接指導・注意を行い、(ⅱ)再三注意したにもかかわらず、改善されないため、軽い懲戒処分(譴責・戒告など)を科し、(ⅲ)さらに改善がみられないため、所定の懲戒手続きのうえ重い懲戒処分(懲戒解雇など)を科すといったステップを踏む必要があります。そして、懲戒解雇のための適正手続を行ったという事実について証拠を残し、のちのち不当解雇としてモンスター従業員から訴えられても、裁判所に対し企業側の正当性を主張できるだけの準備をしておきます。

ⅱ セクハラ従業員・パワハラ従業員に対する懲戒処分

セクハラ従業員やパワハラ従業員の処分に関して不適切な対応を行った場合、逆に企業側がその従業員から訴えられる可能性が十分に考えられます。セクハラ行為を行った従業員の事情を聴取せずに、単にセクハラ被害を受けたと申告している従業員の供述だけに基づき、当該セクハラ従業員を懲戒解雇した場合、「解雇権の濫用」として解雇無効を求めて、セクハラ従業員側から調停や訴訟の提起がなされることがあります。このような事態を回避するためにも、セクハラやパワハラの問題事実の有無の確認や対処については慎重かつ最大限の配慮が必要となります。

更に、セクハラ・パワハラ問題における処分については、被害者の被害感情に対しても配慮が必要となります。企業側が、問題従業員が有能な従業員であることを考慮し、明らかに懲戒解雇とすべき場合であるにもかかわらず、懲戒解雇をせずまた適切な処分を行わなかったとき、被害従業員の怒りに触れる可能性があります。その場合、被害従業員から企業に対し損害賠償訴訟など提起されるおそれがあります。
このような事態になると、セクハラ・パワハラの事実が世間に知れ渡り、レピュテーションの毀損や企業の信用失墜を招きます。
セクハラ・パワハラ従業員の処分に関しては、非常に冷静かつ適切な対応が求められます。

ウ 第三者への対応

不祥事等に第三者が関与し、その第三者の行為により企業が損害を被っている場合は、その第三者に対して、民事上・刑事上の法的措置や、弁護士や警察を利用した対応措置を講ずることが考えられます。以下、その法的措置・対応措置について紹介します。

①一般的な法的措置

「一般的な処分内容」で紹介した、民事上の責任追及として「損害賠償請求」と「財産の仮差押」、また刑事上の責任追及として「告訴」を検討します。

②特殊ケースの際の注意事項
ⅰ ネット上での誹謗中傷・ネット炎上

不当な誹謗中傷・ネット炎上を放置するな
ネット上の不当な誹謗中傷やネット炎上に対し、何らアクションをせず、放置すると、ネット上の書き込みが真実だと認識されかねません。
特に、企業の社長といった地位の高い人への攻撃的なネット炎上は、所属企業のイメージに強く結びつき、その評価・イメージを貶め、間違ったイメージに捉えられてしまいます。
インターネット上では、『人の噂も75日』『沈黙は金なり』は通用せず、放置すれば嵐は過ぎて元に戻るとはならないのです。
そのため、その被害の程度が甚大であったり、あまりに広範囲に広まったりしている場合は、プレスリリースを出すなど何らかの対処を迅速に検討すべきです。ネット上における悪質な誹謗中傷行為に対しては頑固たる態度で臨むべきです。これを放置していると後々類似犯が現れ、更に損害が拡大するおそれがあるので注意が必要です。

炎上中のサイトの閉鎖等をしない
炎上の元となっている炎上中のサイトを閉鎖したり、問題となったコメントを削除したりしたとしても、転記される可能性が高く、ネット炎上に対し効果的な対応策とはいえません。
むしろ、閉鎖・削除したことにより、かえって炎上を強めることにつながりかねず、解決になりません。

ネット上の問題はネット上の「空気」を読む
インターネット上に投稿したり情報配信したりすることは、ネットの向こう側にいる大衆に公表するということです。そのため、その大衆がどのような意見を持っているか気にせずに情報配信することは非常に危険であり、そのようなネット上の「空気」を読まずに情報配信を行うと、ネット炎上という形で反応が返ってきてしまいます。ネット炎上を可能な限り回避するためにも、ネット世界の「空気」を読むことは非常に重要です。
もっとも、ネット世界といっても多種多様な価値観の集まりであり、全員同一意見というわけではありません。そのため、いくら「空気」を読んでも多少の反発は仕方がなく、多少のことは言われても気にしないといった姿勢で臨むこともまた重要です。
ネット上のトラブルは、先例の検討や法的措置の検討など、迅速かつ慎重な対応が必要となるのです。

ⅱ 反社会的勢力・悪質クレーマーによる脅しなど

反社会的勢力や悪質クレーマーが、脅迫、暴行、傷害、恐喝、不退去等に及ぶことがあります。その場合には、直ちに警察に連絡し、これを事件化することが重要です。
また、民事手続により、面談強要の禁止、立ち入り禁止、架電の禁止等の仮処分申請も有効です。
更に、当所を対応窓口に指定することにより、反社会的勢力や悪質クレーマーから企業を引き離し、企業の本業への影響を最小限に留めることも可能です。

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